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- Re: *愛迷華* (実話) 57話更新! ( No.117 )
- 日時: 2013/06/15 17:38
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: jHyiIImd)
- 参照: だぎゃ
第六十一話『傷付ける人』
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女子トイレから出て、私と真枝は外に出ることにした。
ちょうど作業の道具も足りない所だったし、買い出しのついでに。
私と真枝は二人きりで、ひたすら無言。
この沈黙が痛かったけれど、
「……真枝、ごめんね」
その言葉から始め、私は全部真枝に暴露した。
孝仁に告白されたこと、それを保留にしていること。
そして、美紀ちゃんが孝仁に告白した事を——……。
加耶に話したように、包み隠さず正直に話した。
「……孝仁くん、色んな人に告白されてたんだ」
話終わり、ずっと黙っていた真枝がそう口を開いた。
私は真枝の顔を見れないままでいたが、真枝は私の肩に手を置く。
「私は大丈夫だよ。傷ついてない。平気」
真枝のその言葉に、顔を上げた。
……大丈夫、傷ついてない、平気、だなんて嘘だ。
絶対、嘘だ——……。
真枝の顔を見ると、真枝の目は潤んでいた。
「……真枝……」
私が傷つけたのに、いてもたってもいられず。
思わず、真枝を抱きしめた。
「傷付いてるでしょ、真枝」
「……依麻ぁ……」
真枝は今まで我慢していたのが耐え切れなくなったのか、溢れ出る様に声を上げて泣いた。
私はその泣き声に苦しくなりながら、黙って真枝を抱きしめる。
「孝仁くんのこと……私、やっぱり……」
「……うん」
「好きだった、よ……。だけど、諦め時だったし……。これでいいんだよ。だけど、他の女の子に告白されてるのがショックだった」
真枝のその言葉に、美紀ちゃんの顔が思い浮かぶ。
好きな人が被るのはしょうがないことだけれど——。
やっぱり、辛い。
その気持ちは、私も味わったからわかる。
「……こんな私だけど……孝仁くんのこと——今までの恋愛の中で、一番本気だった……っ!」
真枝のその一言で、胸が痛くなる。
大切な友達の恋を、私は壊してしまった。
傷付けて、しまった。
私が一番されたくないことを、大切な友達にしてしまった。
「真枝、ごめん……。ごめんね……っ」
真枝を強く抱きしめて、そう精一杯謝った。
謝っても謝っても、足りない。
「謝ってすむことじゃないけど、でも、私……」
「依麻は悪くないよ……」
「ううん、真枝を傷つけた。真枝は私の為に泣いてくれたり、協力してくれたり……優しくしてくれたのにさ……。私、それを返せなかった」
それがすごく申し訳なくて、痛くて。
悔しくて悲しくて辛くて、涙が溢れる。
「……私、すぐには諦められないかもしれないけどね……? でも、依麻がもし孝仁くんと付き合うなら、ちゃんとおめでとうって言うよ? 依麻のこと恨んだりしないよ」
「やだ……、私、嫌われても仕方ないことしたよ」
ひたすら、泣きじゃくる私。
私より何千倍も辛いはずなのに、真枝は私に優しくしてくれる。
「ううん。……ねぇ、依麻? もし、依麻も孝仁くんが気になってさ、付き合うことになったら……傷つけないであげてね? ちゃんと好きって気持ちで、中途半端な気持ちでは付き合わないでね?」
これが、私からの願い。
真枝がそう小さく呟き、私は唇が切れるほどに噛み締める。
真枝を傷つけてしまったのは、事実。
だからもう、これ以上は傷つけないようにしなくちゃいけない。
もう、傷つけたくない。
「……うん……」
私は震える唇で、そう呟いた。
——本当に、ごめんね。
心の中で何度も何度もそう呟きながら、私は真枝をきつく抱きしめた。