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- Re: *愛迷華* (実話) 57話更新! ( No.118 )
- 日時: 2013/06/15 19:05
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: jHyiIImd)
- 参照: 全部 嘘だってわかってよ
第六十二話『眩しい色』
外でひたすら泣いた私達だけど、相変わらず涙は止まらなくて。
二人で泣きじゃくりながら学校の中に入り……。
廊下で加耶と麻里が出迎えてくれて、背中を優しく撫でてくれた。
そして、二人とも泣いてくれた。
私達、二人の為に。
「……もう、作業しなきゃね!」
真枝は涙を拭い、そう言って教室へと戻って行った。
加耶と麻里も真枝を気遣い、一緒に教室へ入る。
一人になった私は教室に入る気力にもなれず、その場でただ立ち尽くす。
廊下の窓の日差しから入る、夕日が私をそっと照らした。
廊下へと真っ直ぐに伸びるその眩しいオレンジ色の光は、なんだかとてつもなく胸を苦しくさせた。
**
次の日。
今日は七月十一日。
学校祭はいよいよ明日に迫っていた。
結局放課後はロクに作業していない私。
今日は授業がなく、一日いっぱい学祭準備なので、今日はちゃんと教室に留まって準備をしていた。
「——依麻、そこのハサミ取ってー」
「あ、はいよ」
工作が得意な加耶は、ダンボールプラモデルを着々と一人で作っていた。
私とあゆと麻里と真枝は、それを補助していたのだが——……。
昨日の事もあり、少し真枝とは気まずい。
だけどここで私が元凶なのに勝手に気まずくしていても駄目なので、なるべく普通にしようと頑張っていた。
真枝も普通に喋ってくれるしね……うん!
「——じゃあ皆、いったん作業やめて! よさこい練習しよー」
作業をしていた文哉が手を止め、立ち上がりそう言った。
皆も作業をいったん中止し、よさこいを踊る準備をする。
そう、私達の学校は——……。
全学年クラスごとに別れ、よさこいを踊ってパフォーマンスするという伝統がある。
三日間ある学祭の中で、二日目にそれを発表することになっているのだ。
そして上位に選ばれたクラスは、ホールで踊れるらしい。
だからみんな、思い出を作るために気合を入れてる……という訳である。
「……最後にさ、アクロバットとかいれる? その方が点数高いよね」
文哉がそう提案し、皆ざわめき始める。
そこで村野が文哉を指差し、ニヤリと笑みを浮かべた。
「じゃあ、言いだしっぺの文哉とー。冷と……孝仁! アクロバットよろしく」
「「「はぁ!?」」」
村野に指名された文哉、国瓦冷、里見孝仁の三人が声を揃えてそう叫んだ。
文哉は筋肉ムキムキ。
冷は長身で、ヤンキーみたいな見た目……と、これは関係ないか。
そして孝仁は、ちっちゃくて細っこい。
そんなバラバラな三人だが——……。
「……わかったよ、やってみるよ」
「竜真の指名だしな」
「失敗しても知らないからな」
孝仁、冷、文哉の順番にそう合意した。
「よしっ! じゃあ、三人は最後に適当なアクロバットいれて! 皆全体で通してやってみよー!」
村野はガッツポーズをし、よさこいの音声を流し始めた。
クラスの皆、息を合わせて踊り——……。
そして最後の所に差し掛かった時、
「……行くぞ! 孝仁、冷!!」
「「おうっ!!」」
文哉の掛け声とともに、孝仁と冷が地面に手をついた。
そしてそのまま、体を浮かせ——……。
ふわり、と見事に宙を舞った。
「どりゃああああっ!!」
同時に文哉が助走を付け、くるりと一回転。
三人とも無事に着地し、ちょうど音楽は止まった。
「……すげーっ!! やるじゃねぇかお前等!! いいぞ!!」
一瞬クラスが静まり返った後、村野がそう叫んで拍手をする。
周りのクラスメートも歓声をあげ、教室中に拍手の渦が巻き起こった。
——そんな中、私は思わず息を呑み、孝仁を見つめていた。
華麗に宙に浮いたあの瞬間。
そして今、照れくさそうな笑顔を浮かべている孝仁。
そんな孝仁の眩しい姿に——……。
思わず、胸が打たれた。