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第八十三話『思い知った現実』


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授業中も、いつも以上に上の空の私。
孝仁と隣の席……っていうのが、また気まずい。


隣に居る孝仁は、相変わらず元気。
私も元気な振りしてるけど、手に力が入らないなぁ……。
そう思いながらノートを書くが、指から滑り落ちるように、ペンが落ちる。


「……あ」


しまった、と思った頃にはもう遅くて。
ペンは音を立てて、床に落ちた。


「……はぁ」


めんどくさいなぁ……。
そう思いながらペンを拾い上げようと体を少し傾け、手を伸ばそうとした時だった。


それより先に、隣の孝仁が手を伸ばして私のペンを拾った。


「……え、」


私は思わず声を漏らし、手を引っ込めた。
目を見開いて孝仁を見ると、


「はい」


孝仁が、ペンを差し出してくれた。
……なんで、拾ってくれたの。
私の距離から充分近いから、取れたのに。
なんで、拾うの。


「……ありがとう」


どんな顔をしたらいいのか。
どんな声色を出したらいいのかわからない。
躊躇いながらもやっと出せたのは、かすれた声。
私は手を伸ばし、孝仁の手からペンを受け取った。


……やだ、
もう一度、フラッシュバックのように思い出がよみがえる。
やだ、やだやだやだ。


「……っ」


——本当に、終わっちゃったんだね。
昨日思い知った現実を、もう一度思い知った。