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Re: *愛迷華* (実話) ( No.16 )
日時: 2012/12/23 11:59
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: TW1Zh9zP)

第三話『誕生日』


四月十五日。
水城依麻、十六歳の誕生日。
昨日は夜遅くまで起きて、0時に来るメールを待ってみたが……。
きたのは、友達のメールだけ。


——誠からは来なかった。


朝起きて携帯を見ると、メール受信七件。
インフォメーションメールに、友達……。
誠のメールボックスは、何もついていなかった。


「……ふぁ……」


大きなあくびをし、体を伸ばす。
休日にしては少し早めに起きたので、なんだか珍しい感じ。
なんとなく気分をすっきりしたくて、シャワーを浴びる事にした。


**


シャワーを浴び終わり、すっきりとした気分で髪を乾かす。
やっぱ、朝のシャワーはさっぱりするから好きだ。
時計を見ると、時刻は十二時過ぎ。
携帯を見れば、メールは0件。
……まぁ、いいや。今日は家でゆっくりしよう。
そう思いながら、お気に入りのコームで髪を梳かした時。


……電話が、鳴った。


多分ここまでの動きは、たったの数秒の出来事だろう。
私は素早く携帯を手に取り、慌てて通話ボタンを押した。


「……もしもし?」
「……あ、もしもし? 依麻?」


大好きな、声。
愛しい声で、私の名前を呼ぶ。
話したかった人。
ずっと聞きたかった声。


——大好きな、誠の声だ。


「……依麻」
「ん?」


優しい口調。
私は小さく答える。


「お誕生日、おめでとう」


その言葉に、私は大きく目を見開いた。
……覚えてて……くれたの……?
忘れられてるって、思ってたのに。
諦めかけてたのに……。


「……ありがとう……っ」


嬉しくて、思わず声が弾む。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。
自分でもわかるくらい、顔がほころんだ。


「今日たまたま部活午前中で終わりだったからさ〜。会えるよ?」
「いいの!?」


誠のその言葉に、私は子供の様に喰い付いた。
誠は電話越しに小さく笑い、優しい声でこう言った。


「うん。会いたいし」


……その言葉は、やっぱり反則だ。
電話越しにニヤけが止まらなくなりながらも、私は声を弾ませる。


「やった、やった! じゃあ、どうすればいい?」
「俺の家来て?」
「了解! 準備終わったら、誠の家行く!!」


何日ぶりだろう、誠に会うのは。
何着てこう、どんな格好で行こうかな……。
頭の中でそう考えていると、


「誕生日、誰からなんか言われた?」


誠から、突然そう言われた。


「へ? ……まあ、うん」
「誰から?」
「え……、普通に由良とか……」
「俺とか俺とか俺とか?」
「あははっ、男子は誠だけだよ」


男子第一号である、誠くん。
一番に言ってくれたのが、誠でよかったって私は思う。
そう思いながら笑みを零すと、今度は誠が声を弾ませた。


「やった!! よかったぁ……。言わせねぇから」
「え?」
「他の男子に言わせねぇから。誰だろうとぶっ飛ばすよ?」


誠のその発言に、不覚にもドキッとしてしまう。
私が単純すぎるのもあるかもしれないが、私は彼氏にこれだけの言葉を言われるだけでも凄く嬉しいのだ。


誠に出会ってから、付き合ってから。
喜びの気持ちが深く感じられるようになった気がする。
そういうとこも含めて、やっぱり私は誠が大好きで。
誠と彼氏なんだなぁ、って、実感が湧くんだ。


「じゃあ、そろそろ駅着くからさ。またあとで連絡するー」
「了解! 私も準備するね」
「あいよー。……依麻」
「ん?」


『愛してるよ』。
その言葉一つで、やっぱり私は笑顔になるんだ。