コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *愛迷華* (実話) 93話更新! ( No.189 )
日時: 2013/09/01 01:57
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: OROHjpgn)
参照: 本当だっていいよ 戻れないの

第九十五話『1%の期待』


告白した日から休日という二日間の間が空き、気が付けばもう十二月。
もうすっかり空気は冷たくて、冬の匂いがする。


旅行に帰ってきた孝仁は、きっと今日学校に来るはずだけど——。


「——依麻、おはよ」
「おー、おはよー!」
「寒いねー」
「ねー」


孝仁のことを考えながらも、私は自分の席で真枝やあゆや加耶や麻里……いつものメンバーと集まって話していた。


——すると突然、


「ねぇ!!」


そんな声がすぐ近くで聞こえ、その声の主は私の机に思い切り手を置いた。


「は、はいっ!?」


驚いた私は慌てて振り向き、そして目を見開いて固まる。






















そこに居たのは、孝仁だったのだから。




























「……っ」


びっくりしすぎて、声が出ない。
私が固まったまま孝仁を見つめていると、孝仁は小さく微笑んでくれた。


「——……ちょうだい」
「……え?」
「本」
「え、あ……」


孝仁の声に、私の固まっていた思考回路はゆっくりと動き出す。
そう言えば、学校に来たら取りに行くって言ってたけど——。


本当に、取りに来るとは……。


「……は、はい、本」
「ありがと」
「あ、あとティッシュも……」
「あぁ、」


机の中から孝仁のティッシュ箱を取り出し、本と共に返す。
孝仁は両手できちんと受け取った後、


「ありがと」


そんな眩しい笑みを浮かべて、去って行った。


「——……ちょっと、依麻〜」


切なさよりも嬉しさが勝っているこの胸のドキドキを抑えたまま固まっていると、横から小声で加耶が笑いながら私の頭に肩に手を置いた。
振りかえれば、あゆと麻里と真枝もニヤけ顔。


「朝からいい感じじゃないのー?」
「そ、そんなこと……」
「よかったね、依麻」


四人は私を見てそう笑い、再び世間話をし始めた。
……朝から話せたのはよかったし、凄く嬉しい。


ただ、彼は本を取りにきただけ。
そう、それだけだけど——。


保留されている身分なのに、ほんの少しだけ期待してしまっている私が居た。