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Re: *愛迷華* (実話) ( No.19 )
日時: 2012/12/23 12:09
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: TW1Zh9zP)

第六話『言葉と重荷』


「——ん、じゃあ了解! 世良にも連絡つけといて」


色々と考えている間に、誠と大北の電話は終了していた。
私はハッと我に返り、誠を見る。


「大北、ダブルデートの件OKだって」
「そっか……。ならよかった」


私は薄い笑みを浮かべ、誠にそう言った。
上手く笑えなかったことに疑問を抱いたのか、誠は少しだけ不思議そうな顔をする。


「依麻? なしたの」


その顔で見つめられると、少しだけ胸が痛くなる。
私は誠から視線を逸らし、ゆっくりと口を開いた。


「……私って……、毎日会いたいのかな?」


自分が一番わかってる、答え。
こんなの聞いても、どうにもならない。


「……そうじゃないの?」


そんなの、わかってる。
返ってくる答えは、大体予想できる。


「依麻の目に、『寂しい』って出てるんだもん」


我慢していても、やっぱり態度に出ちゃうのか私は……。
未熟な自分が腹立だしく思いながらも、誠を見た。


「我慢してるんだよ……これでも」
「あ、我慢してるの? ならいいじゃん」


誠は軽く受け流したけど、やっぱりモヤモヤして。


「……ね、依麻ー。上に乗って」
「乗ってほしいの?」
「んー」
「……はいよ」


なんだかんだ、甘えん坊の誠。
私が誠の希望に応えると、誠はご機嫌になる。


「依麻〜」


上に乗っかると、誠は私を引き寄せて抱きしめてくれた。


「なんかこの感覚、久しぶりー。ちゅ」
「ん」


誠の唇に、ゆっくりとキスを落とす。
唇が離れると、誠は可愛い笑みを浮かべて私を見つめる。


「あはは、誠可愛い。よいしょ……」
「やだ、降りないでー」


降りようとすると、誠に手を掴まれてもう一度引き寄せられた。
私は思わず驚きながら、抵抗できずにもう一度誠の上に重なるようにして倒れた。


「依麻の事、離さない」


そう言ってくれるのは、嬉しい。
でも——……。



























「……依麻……?」


胸が、苦しい。


「……なんで」


誠は、目を見開いている。
私は眺めるような形で、じっと誠を見ていた。
しかしもう視界はぼやけていて、誠の姿がちゃんと見えない。


「……なんで、泣くの?」
「……っ泣いてない……」


乱暴に、目頭をこする。
馬鹿みたい、私。
泣くな、泣くな——。


「泣いてるでしょ」
「……ううん、違う……」


何が、違うんだろう。
自分がわからなくなりながらも、必死に涙を堪えた。


しかし、


「……はぁ……。まじ萎えた」


その言葉で、更に涙が。
……我慢してるとか、どこがだよ。私。
全然我慢できてないじゃん。


「……ごめんね。こんな酷い彼氏で」


違う。
誠が悪いんじゃない。
私は、ぶんぶんと首を横に振った。


「泣いてる理由、教えてよ」


誠は、私の顔を見つめたままそう言った。
私はぐちゃぐちゃの泣き顔を必死に隠しながら、無言で俯いた。


「依麻のこと大好きなのになー。こんなに愛してるのになー。……理由、教えてくれないんだ?」


誠が小さく笑みを浮かべた。
その笑みが妙に意地悪に感じながらも、私は再び誠を見つめる。


「……だってさ……、」
「うん」
「……私だけ、会いたいのかな……って……」


ゆっくりと言葉を紡いでいくが、涙が次々と零れ落ち、やがて言葉にできなくなった。
以下に私が弱虫なのかが、改めて実感。
必死に涙を喰い止めようと目頭をこするが、全部無駄で。


「……あー……。依麻だけじゃないよ。俺も」


涙が、止まらない。


「……ごめんって」


誠が真剣な表情になり、私を思い切り引き寄せた。
私は再び誠の上に倒れ掛かるような形になり、思わず戸惑う。


「依麻」
「……っ」
「泣き止んで」


誠は、優しい声でそう言った。
——私は、なんてめんどくさい女なんだろう。
でも、私だけが好きなのかなって思っちゃう。


「俺も依麻の事ちゃんと好きだし、出来るもんなら俺だって毎日会いたい。高校離れる自体やだもん」
「……うん」
「久しぶりに会ったんだからさ、笑ってよ。俺、依麻が笑ってないとやだ」
「ごめん……」


私は力強く涙を拭い、誠を見つめた。
誠は私に向かって笑ってくれたので、私もぎこちなくなりながらも一生懸命笑った。


「俺こそごめんね」


誠は優しくそう返して、笑みを浮かべた。
そこで、感情のまま泣いてしまった自分に後悔をした。


「なんも誠は謝らないで! ……ダブルデート、するなら早く行こ!」


引っ張るようにそう言い、私は立ち上がった。
誠もゆっくりと頷き、


「行くか」


私の背中を、軽く押した。