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Re: *愛迷華* (実話) 98話更新! ( No.204 )
日時: 2013/09/06 22:38
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: mwHMOji8)
参照: 本当だっていいよ 戻れないの

第百三話『好きと本題』


電話のコール音が、私の鼓膜に響く。
今思えば、ちゃんとした電話を私からするのは初めてだ。
一コール、二コール、三コール……。
どんどん続くその音に胸が締め付けられるのと同時に、


≪——はい≫


孝仁は、電話に出てくれた。


「も、もしもし?」


震える声で私は、孝仁に対しそう言うが……。


≪……≫


孝仁は、無言。
一瞬電話が切られたかと思ったが、画面を見ればまだ繋がっている。


「え」
≪もしもし?≫
「は、はい」
≪なした≫


やっと答えてくれたその声。
私はかなりテンパりながらも、なんとか自分を落ち着かせて口を開いた。


「今大丈夫?」
≪なにが?≫
「え、い、今大丈夫?」
≪なにが?≫


孝仁、大丈夫か。
私は軽く吹き出しながらも、もう一度口を開いた。


「今大丈夫?」
≪電話ってこと?≫
「うん、大丈夫だった?」
≪だいじょーっぶ! 今小八の家に泊まってる≫
「あ、え、大丈夫?」
≪うん。なしたー?≫


なんだかいつもよりテンションが高い孝仁。
お泊りしてるからだとは思うけど……って、ちょっと待て。
じゃあ、今隣にハチが居るってことだよね……!?


「……えーっと……」


私は少し言葉を濁しながら、小さく笑う。
ハチに聞かれてるかもしれないけれど——。
ええい、それでも関係ない!!


水城依麻、本題を持ち込みます!


「……あの、私告白したじゃん?」
≪うん≫
「それで、あの、伝え忘れたというかー、まだ伝えたいことがあって」
≪……うん≫
「それを、あの……。返事くれる前に聞いて欲しいなーって!》
≪……ん、なるほど≫
「つ、伝えてもいいですか?」
≪伝えてくれるのかー!≫
「う、うぉん」


言葉がおかしくなりながらも、私は小さく頷く。
すると数秒間があいた後、


≪……わかったよ、どんとこい≫


孝仁は、優しい声でそう言ってくれた。
……もう、これだけで今の私には充分……なんだけど。


だけど、きちんと伝える。
終わり方はあっけなくても——。


今ならちゃんと、彼は聞いてくれているんだから。


「ありがとう。……えっと……まず、祭のことなんだけど……。本当にごめんね」
≪……あー、いいって! そんなこと気にすんな≫
「いや、気にしてるしょ」
≪気にすんな、大丈夫だから≫


改めて、謝罪の言葉。
孝仁の優しいその答えだけで、もう既に泣きそうになっていた。


「……っと、とにかく、傷つけちゃったから! 本当にごめんね」
≪あぁ≫
「……色々、傷つけて本当にごめんなさい》
≪それも気にすんなよ。


























てか依麻、髪切ったべ?≫


唐突にきた、その孝仁の言葉。


「……っへ、髪?」


突然すぎて驚いたのと、気付いてくれたことに嬉しくて。
思わず変な声が漏れてしまうが、


「……うあ、うん」


孝仁に返事を保留された後、胸の上まであった髪を肩より上までバッサリと切ったのは事実。
だから私は、間抜けな対応ながらもちゃんと頷いた。


































≪似合ってるよ。俺、ショート好き≫






























好き。
孝仁のその言葉——『好き』が、私の頭の中でひたすら木霊した。


孝仁が髪型を褒めてくれたこと。
気付いてくれたこと。
そしてちょっと照れるように笑ってくれたことに、驚きと嬉しさが一気に込み上げてきた。


「……あ、ありがとう」


嬉しくて、思わず涙が出てきて。
……まだ、泣くのには早い。
そう思い、涙を拭って次の大事な言葉を言おうとした瞬間。


≪じゃあ、≫


切られかけた。
私は慌ててそれを止めようと、素早く口を動かす。


「ちょちょちょちょ、」
≪わかったよ、依麻のいいたいこと。気にしなくていいから≫
「……うん、とにかく最後まで聞いてよ!!」


思わずそう叫んでしまう私。
すると孝仁は一瞬動きが止まり、


≪はい≫


笑いながら、もう一度聞く体制をつくってくれた。








……水城依麻、改めて本題に参ります。