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Re: *愛迷華* (実話) ( No.23 )
日時: 2013/01/10 00:10
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 5YaOdPeQ)
参照: ちゅっちゅっぱらりらー

第九話『メアド交換』


四月も終盤に差し掛かり、誠と連絡を取る回数が日に日にと減って行った。
『連絡する』と言ってくれても、必ず連絡は来ない。
待って待って待ち続けるけど、誠は何も不安と悲しい気持ちが募るそんな気持ちの、ある日の出来事。


















「——……可愛いよね」


それは、六時間目の集会最中。
クラスの男子が、こちらの方を向いてぼそぼそと話していた。
内容は『好きな人』『可愛い』などの単語が飛び交っているので、きっと恋愛だろう。
こっちの方を向いているので——。
多分、私の後ろのクラスでも上位に可愛い矢川美紀ちゃんのことだろう。
今、『小さい』って単語が出てきたしね。


そう思いながら、深く気にせずに前を向いていた。


**


放課後。
何食わぬ顔で教室を出ようと、ドアの方へ向かっていたとき——。


「——ねぇ」
「!?」


いきなり横から、男子が現れた。
え、な、え!?
は、話しかけられた!?
私は足を止め、思わず目を見開いた。


「ちょっとさ、メアド交換しない?」
「へ?」
「メアド交換」


そう言った男子は、手慣れた手つきで素早く携帯を出した。
ちょ、校内で携帯使ってんの見られたら放課後でも没収ですよ。
そう思いながらも、私は戸惑いながら首を傾げた。


「え、あ、いいけど……どこで?」
「こっちで」
「……あ、うん」


男子が私の前を歩き、廊下へと向かいだした。
私は数秒遅れながらも、男子の後ろを追う。


「お、なに小八!! 口説いてるの? ガチで口説いちゃってる系!?」


教室から、何やら複数の声が聞こえてきたが——。
私は特に気にせず、男子と共に廊下へと向かった。


「……じゃあ、赤外線しよ」
「う、うん。いいよ」
「どっち送る?」
「どうしようかぁ……」


私も携帯を取り出し、画面を見つめた。
……軽い、沈黙。
なんだろう、この沈黙は。
何か話題出さなきゃなぁ、とか思ったとき。


「彼氏いないしょ?」


その男子は、そう口を開いた。
いきなりの発言に、少しだけ動作が遅れながらも、私はゆっくりと口を開いた。


「や……。一応、いる」
「え、いるの!?」
「うん」


男子は目を見開き、私に向かってそう言った。
そんなに驚くことですか……?


「彼氏って、この学校にいるんでしょ?」
「いや、違う学校」
「え、まじかよ」


男子は、低い声でそう言いながら携帯を開いた。
そういえば、思ったけどこの人の名前もよくわからない。
ただ、声が低くて——……。
……身長が、少々低い?


そう思いながら男子を見ていると、男子は頭を掻きながら携帯を私の方へ向けた。


「……まぁ、メアドだけでも交換しよ」
「うん」
「じゃあ俺送るから、登録して」
「わかったよ」


私は赤外線の画面を開き、自分の携帯を男子の携帯へと近づけた。
受信完了、という文字が浮かび、私は顔を上げる。


「きた?」
「うん、きた」
「じゃあ、メールしてね」
「うん」


私が頷くと同時に、素早く男子は去って行った。
残された私は、受信された赤外線の名前を見る。


『小八克弥』
こ……はち、かつや……?


——ハチ?


「水城!!」


村野に呼ばれ、私は我に返る。
小八克弥……ハチのメアドを素早く登録し、村野の方を見た。


「小八に呼び出されたの?」
「ん?」
「こばち。さっきのヤツ!」


あ、あれ?
はちじゃなくて、ばち!?
いや、でもよく見たら犬みたいな顔してたしハチでいいや。


「何言われたの?」
「え、普通に……。メアド聞かれた」
「お前彼氏いるんじゃないの?」


村野のその言葉に、少しだけ言葉に詰まる。
確かにいます、いますけど……。


「……っい、いるよ。一応いるって言ったし」
「あぁ、言ったんだ。メアド交換したの?」
「まぁ、一応したよ」
「まじか、——……だな」


村野はそう言い捨て、去って行った。
肝心の言葉が、よく聞こえなかったんですけど……。
まぁ、いいか!


私は家に帰り、ハチにメールを打った。
普通に返信は返ってきて、『さっきは突然ごめんね』と謝罪のメールが来た。
気にしないでいいよ、と打ち、とりあえずその日のメールは終了した。


しかし、これがきっかけで私の日常に大きな変化が訪れるとは——。
思っても、いなかった。