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- Re: *愛迷華* (実話) ( No.26 )
- 日時: 2013/04/21 23:46
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 5ZyVc2k3)
第十一話『懐かしい音』
あの日の電話から誠とは連絡をとらない日が続いた。
もう、日付は五月。
高校生になって、もうすぐ一か月が経とうとしている。
そんなある日の夜。
ある着信音が、私の鼓膜に鳴り響いた。
「……あれ、この受信音って……」
あまり聞きなれない、メール受信音。
なんだか少し懐かしいけど、胸を締め付ける受信音。
私は、携帯を持ち上げれないまま、呆然と立ち尽くしていた。
「——……壱?」
私の口から、その名前が出るのも久しぶりで。
なんで、今更、どうして。
その三つの単語だけが、頭の中を過っていた。
壱からメールが来るなんて、初めてだ。
「……ふぅ、」
何度か深呼吸をし、心を落ち着かせた。
何が書いてあるのか。
ゆっくりと携帯を持ち、いつもよりぎこちない操作をしながらメールボックスを開いた。
from.壱
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突然だけど、まなのメアド持ってる?
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「……へ、」
意外な名前、そして意外な内容に、思わず拍子抜けしてしまった。
まなって……あの、まなだよね?
そういえば高校に入ってからは、まなとクラスは離れてるし全然関わりもなかったな。
そういえば、壱も一応私と隣のクラスなんだよな……。
そんな事をふと思いながら、メールの返事を打った。
from.依麻
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もってるけど、なした?
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ちょっぴり素っ気ない返事になっちゃってるのは、もう壱の事は好きじゃないから……だよね?
自分に自問自答をし、送信ボタンを押す。
あぁ、なんだか懐かしいな、この感じ。
壱が好きだったころは、一方的に口実を作って、一方的にメールしたなぁ……。
そう思っていると、すぐに返事が来た。
from.壱
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よかったら教えてほしいな^^;
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壱らしい、優しい口調。
優しいのは、今も変わりないんだね。
少しだけ、安心した。
from.依麻
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わかったよ!
これまなのメアドね^^*
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まなのメアドを添付し、送信。
でも、なんでまなのメアド——?
少しだけ疑問が残ったが、私に頼ってくれたのが、なんだか少し嬉しくて。
from.壱
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ありがとう^^*
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『ありがとう』。
壱のありがとうなんて、久しぶりに聞いた。
……いや、実際に言われたのは初めてかも。
私はそこで調子に乗り、
from.依麻
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いえいえ♪(笑)
またなんかあったらいつでも頼ってね!
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素早くこう返事してしまった。
……今更、何言ってんだか。
自分に呆れかえりつつも、どこかで返事を期待していたのかもしれない。
『またよろしく』……なんていう、優しい返事を。