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Re: *愛迷華* (実話) ( No.27 )
日時: 2013/04/21 23:49
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 5ZyVc2k3)

第十二話『疑想』


結局、昨日壱からの返事は来なかった。
だけど、久しぶりに甦るあの感覚に、なんだか少し頭がボーッとしていて。
いつも以上に、上の空になりながら授業を受けていた。


そしてあっという間に昼食の時間になり、ふわふわとした手つきで弁当箱を取り出した時、


「——き、水城!」
「……ぁ、へ? あ、な、なに?」


村野に何度も名前を呼ばれ、少し驚きながらも我に返った。
村野は私をじっと見つめ、口を開く。


「お前、誠と最近どう? 連絡取ってる?」
「どうっていっても……。連絡してないし」


なんだか、現実を突き付けられた気がする。
好きな人だった壱から連絡が来ても、当の本人——彼氏である誠からは一向に連絡が来ないのだ。


「連絡しろよ! なんで連絡してないの?」
「それはわかんないけど……」
「別れそうな訳じゃないんでしょ?」
「うん……まぁ。多分」


私は、曖昧に返事をした。
村野と会話し慣れてない、っていうのもあるけれど……。
誠との関係は、本当に今曖昧な感じなのだ。


そう思ってると、村野が呆れた笑み混じりで私を見た。


「……まぁ、もういいんじゃない?」
「え?」
「鬼陽にもっといっぱいいい人がいるよ!」


村野は、爽やかな笑顔でそう言った。
……う……っ。
とりあえず笑みを浮かべるけど、何も言えん。


「……なんで俺の方見るんだよ」


ハチの声が遠い何処かで聞こえるが、もはやそれも深く考える暇もなかった。


鬼陽にいい人……かぁ……。
やっぱこんな時、壱を思い出すな。


私が今でも壱の事が好きだったら、どうなっていたんだろう。


**


頭の中では、うっとおしい位に村野の言葉と壱の事が駆け巡り、なんとか複雑な心境の中、お弁当を食べ終わることが出来た。
慣れた手つきで弁当箱をバッグに詰め込み、いつものように教室から立ち去る。


そんな時、


「——依麻」


鼓膜に響く、高い声が聞こえてきた。
廊下で立ち止まって振り返ると、ちょうど後ろにまなが居た。


……なんという、偶然。


「……なした?」
「昨日、珠紀壱からメールきたしょ?」
「え、まぁ、……うん」


な ん で 知 っ て る ん だ


「どう? 依麻」


な に が


「へ、あ……」
「昨日壱からメールきたとき、どうだった?」
「どうって……え。どういうこと?」


状況が、掴めません。
まず、何故まなは知ってるのでしょうか。
そして、昨日のメールの関連と言い……。
こんな偶然ったらない、うん。


そう思ってると、まなが怪しげに笑みを浮かべた。


「……あのね、依麻が前に壱に告白したことあったじゃん?」
「うん……」
「あれ、壱はノリで振ったんだって」
「……は?」


ノ リ ?


「え、どゆこと?」
「あの時は男子たちがいたから、ノリで振っちゃったんだって。だけど本当は、壱も依麻の事が好きだったんだよ」
「……え」


今 更 ?


「それいつの話?」
「つい最近。火曜日だったかな」
「どうやって聞いたの?」
「本人から直接。火曜日カラオケ言ったときに一人でいたから、依麻の事どう思ってるの〜? みたいな」
「え、え、え」
「だから、本当は両想いだったんだよ!」


はああああああああああ!?
私は開いた口が塞がらず、まなを見つめたまま立ち尽くしていた。
私と壱が、両想い……だった……!?


「ね、依麻は壱のことどう思ってる?」
「どう思ってるって……私、彼氏いるんだよ?」
「壱の事、嫌い?」


う。


「嫌いでは……ないけど……」
「壱、彼女欲しいって言ってたよ」


まなはそう笑みを浮かべ、「じゃあね」と手を振りながら去って行った。
残された私は、しばらく立ち尽くすことしかできなかった。


『両想い』
——そんな事今更言われても、困るよ。