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Re: *愛迷華* (実話) ( No.37 )
日時: 2013/04/29 22:12
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: cs0PNWSr)

第十六話『突然の、』


昨日の、突然のハチの告白から一夜明けた。
目が覚めると、もう昼過ぎで。
今日は朝から土砂降りの雨で、しばらくごろごろと布団の中から出られずにいた。


壱の事と言い、ハチといい——。
相変わらず誠からは連絡は来ないし、こんな気持ちのまま私から連絡する気にもなれない。


私は、昔から五月とは縁がないのかもしれない。


**


そんな事をだらだらと思っていると、気が付けば夕方になっていた。
雨は一向に降りやまないまま。
なんだか気分がスッキリしないので、半身浴をしようかとお風呂を沸かすことにした。
重い足取りで洗面所へ向かい、お湯を沸かす。
その間に洗面台の前でボサボサの髪の毛を梳かしていると——……。


「……うわ、びっくりした」


ズボンのボケットの中に入れていた携帯が、震えだした。
慌てて携帯を開くと同時に、震えが止まる。
……メール。


浮かぶのは、『誠』という愛しい名前。


from.誠
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
今、駅なんだけど……。


今から、会える?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


連絡が来るのは久しぶりだし——。
単純に、嬉しかった。
だけどどことなく、罪悪感を感じた。


from.依麻
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
会えるよ。

どうすればいい?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


短い文章を打ち、すぐに送信。
そして、小さく溜息。
とりあえず、お湯を止めよう。
半分溜まったお湯を止めて、もう一度洗面所に戻るとメールが返ってきていた。


from.誠
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
駅で待ってて
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


了解。
短くそう送り、時計を見る。
半身浴なんてしている場合じゃないから、急遽シャワーに変更。
私は軽く慌てながら、急いでお風呂場へと向かった。


**


シャワーを浴び終わり、時刻は七時過ぎ。
髪を乾かす時間もなくて、雨も土砂降りだからそのまま家を出た。
少しだけ肌寒い気温を冷たく感じながらも、雨の中自転車を動かそうとしたとき——。


誠から、電話が来た。


「……もしもし?」
≪もしもし? 今どこ?≫
「ごめん、まだ家の近く……」


一旦自転車を止め、雨で張り付く前髪をかき分ける。
受話器越しに、「あー」と誠の声が聞こえた。


≪まじか。……や、遊べなくなったかもしれない≫


は ?


「……え、」
≪ごめんね。なんか家族で飯食いに行くって≫
「まじかー……。なら遊ぶのやめよ」


また、会えないのか。
家族と出かけるのなら、仕方がないけれど。
そうはわかっているが、少し棒読みがちになりながら誠にそう言った。
しかし、


≪……いや、≫
「え」
≪とりあえず、母さんに聞いてみる。だから、ちょ、とりあえず一回俺の家来て≫


予想外な展開。
私は少し驚きながら、電話越しに伝わりもしないのに首を横に振った。


「えぇ? ……いや、いいよ、やめよ?」
≪やだ、きて≫
「やぁ、だって……」
≪だってもない! 一緒に飯食いに行けるかもだし。とりあえず来て! じゃあまた後で電話するから!≫
「え、ちょ……」


ぶち。
いつもより派手に、電話の切れる音が聞こえた気がした。
ツー、ツー、と電話越しに流れ——。
私は立ち尽くしたまま、雨に打たれていた。


……これは、行くしかないのか?