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Re: *愛迷華* (実話) ( No.41 )
日時: 2013/05/05 13:52
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: xW7fLG6h)
参照: あひょひょのひょ

第十九話『矛盾とすれ違い』


どのくらい、時間が経ったのだろう。
気が付けば、もう夜中の0時過ぎで。
雨の音はまだ止まず、布団にくるまりながら私は小さく欠伸をした。


「……依麻、やっぱ明日遊べないかも」
「え」


欠伸の最中の思わぬ発言で、危なく顎が外れるところだった。
まさかのここできて、突然のキャンセル?
数時間前の車の中での約束は、どうなった!?


驚いている私に、誠からさらに追い打ちがかかった。




















「……今日は、もう早く帰った方がいいんじゃない?」
























その一言で、私の中で一気に何かが冷めた。
『明日遊ぼ?』『一緒に寝よ?』
……さっきまでのあの甘えながら言ってきた言葉は、なんだったんだ。


あまりにも、矛盾しすぎじゃないかい?


「……わかった、もう帰る」


私は布団を放り投げ、立ち上がった。
誠も顔を上げ、私を見る。


「送る」
「……いい」


さっきまでのテンションを、返せ。
心の中でそう思いながら、帰ろうとした。
しかし、


「なんで? 送るってば」
「雨降ってるし、いい」
「なんで」
「一人で帰れる」
「送っちゃ駄目なの?」
「そんな事言ってない」


誠の言葉に、私は全部冷たく返した。
それがいけなかったのか——。
やがて、誠は大きく溜息をついた。


「……っ訳わかんねぇ……」


誠は舌打ちをし、もう一度大きなため息をついた。
その行動にも傷つきながら、私は誠を見つめる。


「……とにかく、私もう帰るから」
「傘もってけ」
「いい」
「電話は?」
「いい」


全部冷たくあしらっていた私であったが、


「電話させて。頼むから」


誠のその苛つきが出ている言葉に、思わずひるんでしまった。
誠はいつの間にか俯いている。


「わかった……」


ゆっくりと頷くが、誠は顔を上げないまま。


「……じゃあ、帰るね」


そう言っても、誠は何も返さず。
私は一人で玄関まで行き、雨で少し濡れた靴を履く。
……振り返っても、誠は来ない。


「……お邪魔しました……」


少し声が震えがちになるが、返事は何も返ってこない。
私はドアをゆっくりと開け、勢いよく外に飛び出した。
雨はやっぱり止んでいないままで、再び私の体をびしょ濡れにするのにも時間はかからなかった。


「……」


雨の中、沈黙で歩く。
夜中だから、もう人影も少ないし、住宅街も静かだ。
途端に寂しくなって、急に胸が締め付けられて。
思わず、子供みたいに声を上げて泣いてしまった。


雨の音で、声も消してくれる。
雨の滴で、涙も隠してくれる。


それだから、よかった。


こんな情けない姿、人に見せられない。