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Re: *愛迷華* (実話) ( No.56 )
日時: 2013/05/06 15:47
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: kzjN7yPk)

第二十八話『一方的』


『ハチの事もっと知りたい』。
そう決めてからハチを目で追う様になった私だが、特に進展もなく——。


いつの間にか日付も六月に入り、その日の夜は久しぶりに誠から電話がきた。
私は嬉しくなり、弾む声で勢いよく電話に出る。


「誠? 久しぶり〜!」
「あぁ、依麻……」


私のテンションとは違い、誠はなんだか暗い。
……なに、なにがあった。


「どうしたの?」
「今日、部活でさ……。間違えまくった……」
「あ、吹奏楽ね……」


吹奏楽部。
誠がこの部活に入ってから会える時間もなくなったし、誠はこの話しかしない。
正直、少しうんざりしてきていた。


「死にたい……」


この誠の一言で、私のテンションは落ちる。


「何で簡単にそういうこと言うの?」
「……」
「聞いてんの? 誠?」
「……」


だめだ、完璧スルーだ。
私は溜息をつきそうになるのを堪えながら、


「死んだらだめだからね」


とりあえず、これだけ呟いておいた。
すると、やっと誠から反応が。


「……またあとで家ついたら電話するわ」
「え、あ」
「じゃあね」


誠は電話を切り、私は呆然と立ちすくむ。
い、一方的すぎる……。


どうせ、『電話する』って言っても電話はこないんだ。


この私の予感は的中し、結局いくら待っても電話が来ることはなかった。