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Re: *愛迷華* (実話) ( No.57 )
日時: 2013/05/06 16:26
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: kzjN7yPk)
参照: とーどーけー(・Д・)ブルァアァ

第二十九話『うそつきILoveYou』


自分の気持ちに気付いた時、


思った以上に好きになった。


手放そうとしたら、


思った以上に傷付いた。


**


次の日、改めて誠から電話が来た。
昨日のでうんざりしてきていた私は、電話が来てもいつものようにテンションが上がることはなかった。
電話の内容は部活の事、女の子の事。
私が質問しても、答えてくれない。
話を聞いてくれない。
しまいには、電話越しにリコーダーを吹き始めた誠。


それが続き、私はイラつきと不満を誠にぶつけてしまった。


「さっきからなんなの? 話聞いてよ」
≪んー?≫
「せっかくの電話なんだから楽しい話しようよ」
≪……≫
「まずさ、私と電話するのかリコーダー吹くのかどっちかにしたら? 毎回電話するとか言って電話してこないしさ、忙しいならそんなこと最初から言わなければいいじゃん」


少しキツめに言ってしまったが、これが私の本心だ。
こんな一方的な電話、嫌だ。


——しばらくして、誠から出た返答は、


≪疲れた≫


ただ、それだけだった。


疲れた……だと?
更にイラッときた私は、


「だめだね、ぐだぐだ」


こう言い放った。


≪うん≫
「だめだね、ほんと」


会いたくても会えない。
寂しいけど、それは我慢できる。
でも最近は唯一会えても喧嘩ばかりで、連絡もとれない。
たまに連絡が取れても喧嘩になる。
なにしろ私は、『電話する』と言ってしてこないのが一番嫌だった。


私は積み重なる誠の言動に、大分冷めてきていた。


「……友達に戻る?」


思わず出た言葉。
別れよう、とは私の口からは言わなかった。
言えなかった。


「毎回会うたびに喧嘩だし、このままだったらお互い傷付けあってると思う」
≪……俺も友達に戻った方がいいかなって思ったことはある≫
「じゃあ、正直私のこと……どう思う?」
≪わからない。依麻は?≫
「私も、わからない……」


自然と涙が、零れ落ちた。
……自分の気持ちが、わからない。
誠のことは、好きだ。
好きだけど、確実に前よりは冷めている。
じゃあ、この涙は?
なにが悲しいの?


≪お互いこのままずるずるになるなら……友達に、戻る?≫


誠の声が、少し震えていた気がした。


——嗚呼、駄目だ。


誠でうまくいかないからって、ハチに逃げようとしている自分がいる。


「……じゃあ、直接会って話したい」
≪いつ会えるかわかんね≫
「そっか……」


会いたくないよね、きっと。
だけど友達に戻るのなら、私は直接会って話したい。
曖昧のままで終わらせるのは、嫌だった。


≪……あぁ、もう……≫


そう考えていた時に、誠の泣きそうな声が聞こえた。
……いや、泣いてる?


≪……別れたくない……≫
「誠……」
≪もう、別れたくない≫
「もうって、」
≪後悔したくないんだって……≫


誠は震えた声で、そう呟いた。
これだけで『愛されてる』気がした。


だけど今の私には、それをうまく答えられなかった。


≪……もう、この話やめよ。別れないってことでいいしょ≫
「……うん」


だから、頷くことしかできなかった。


≪会えないっていったけどね、日曜日は記念日だし二人でホール言ってクラシック聴こうと思ってたんだ≫
「クラシック……?」
≪うん。あ、でもチケット使えるかわからないからさ、確認してからまた連絡する≫
「……わかった」


日曜日。
六月十日で、私達は八ヶ月記念日だ。
誠はこういってくれてるけど、再びドタキャンとかされたりしそうで——。
なんとなく、怖かった。


≪こういうことがあった後は寂しい≫
「そうだね」
≪とりあえず、あとでまた電話するから≫
「無理はしなくていいからね」
≪無理してないよ。愛してるよ≫


誠はそう言って、電話を切った。
その後また、しばらく電話を待ったが——。


結局、再び電話が来ることはなかった。


やっぱり、口だけなのか。
そんなこと思いたくなかったけど、だめだ。


やっぱりどこかで期待していた自分が、馬鹿だったんだ。