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Re: *愛迷華* (実話) ( No.70 )
日時: 2013/05/12 01:17
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: kzjN7yPk)
参照: 書き溜めてるけど先は長い……www

第三十五話『涙と決心』


「……依麻、大丈夫かい?」


顔を上げると、呼吸を乱した世良が立っていた。
私は世良に向かって笑みを浮かべ、立ち上がる。


「なにがあった?」


世良は私の顔を見て、真剣な顔で呟く。
私もゆっくりと、それに応える様に口を開いた。


「……すれ違ってたの、私達」
「それ、誠も言ってた。高校離れたのもあるって。誠、部活と恋愛をうまく両立で来てなかったって言ってたよ。だから、高校離れたせいでこうなった——って悔んでた」


高校が離れたせいだけじゃない。
——きっと、その時から私達はすれ違い始めてたんだ。


「誠のせいじゃないよ。私から別れを告げたんだもん。だから、私は大丈夫。傷付けちゃったのは私だしね」
「依麻、自分を責めすぎだよ!! たまには迷惑かけたりしてもいいんだよ」


世良は私の肩を掴んで、唇を噛んだ。
そして一息ついてから、もう一度私を見る。


「お互い傷付けあっちゃったならさ、お互い様だよ。依麻だけが悪い訳じゃない。あの自由人の誠と八ヶ月も続いたんだもん。依麻、充分すごいよ」


世良はそう、笑顔で言ってくれた。
私の目頭が、一気に熱くなる。


——なんで、


「依麻強いよ」


なんで、


「ちゃんと深く考えてるし、あの時だって、誠と面と向かって話してた」


なんで、


「そうかな? 私すぐ泣いちゃうもん」
「私だったら、無理だもん。泣けるくらい相手を思ってたんだから、すごいことだよ」












なんで、そんなに優しいの——……?


























「——依麻……?」


気が付けば、私は世良を抱きしめていた。


「世良、大好き」


ぎゅ、と力を込める。
世良は戸惑っていたが、やがて私の背中に手をまわして抱きしめ返してくれた。


「……ありがとう」


世良の震える声。
もう泣くつもりはなかったのに——。
私の目からは涙が溢れていて、一向に止まらなくて。
私達はお互いに抱きしめあいながら泣いた。


——もう、これで泣くのは最後。
もう誠の事で、泣かない。
由良の前でも世良の前でもたくさん泣いた。


私は私なりに、前に進むんだ——。