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- Re: *愛迷華* (実話) ( No.86 )
- 日時: 2013/05/21 17:19
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: p17IpJNR)
- 参照: ぼよよよん
第四十二話『友情と戸惑い』
高校で出来た仲のいい友達の、突然のカミングアウト。
私はその場の時が止まったかのように、固まった。
「——……え、それ、いつから?」
私の口調は自分でも驚くくらい普段通りで、『なにしてるの?』と笑いながら言う口調にも似ていた。
加耶は先程より泣き止み、鼻をすすりながら私を見る。
「……依麻に言ってなかったけど、六月くらいから好きだったんだ……。ずっと黙ってて本当にごめんね……」
「え、いや、あ、謝らないで! 加耶が謝ることじゃないしょ! それに、なんも私には気を使わずにもっと早く言ってくれればよかったのに〜!」
「言えないよぉ……っ」
加耶は潤んだ瞳で私を見つめる。
そんな目で見られちゃ、OH……。
「依麻が好きなの知ってるのに、かやが勝手に好きになっちゃったんだもん! なのに……」
加耶の瞳から、再び涙が零れ落ちる。
私はひたすら手を横にぶんぶんと振り、笑みを浮かべた。
「そんなの、私のことは気にしないでいいんだよ! 私は大丈夫だしさ」
「……でも……」
「逆に、加耶が小八のこと好きって知らないで色々小八のことで話しちゃって……。私こそごめんね」
私がそう謝ると、加耶は首を横に振る。
「依麻こそ、依麻が謝ることじゃないよ……」
「いやぁ、加耶は本当に悪くないから! 好きな人被るのはしょうがないことだもん、ね? だから——……」
私は加耶の頭を優しく撫でる。
それと同時に、誰かに後ろから肩を叩かれた。
驚いて振り返ると、
「……真枝……?」
教室から出てきていた、真枝が居た。
真枝は私と加耶を見つめ、少し俯く。
「……私もごめん、依麻。加耶ちゃんが好きなの知ってたのに、黙ってた」
真枝はそう言い、ちらりと私の顔を見る。
私は再び手を横に振り、真枝に向かって笑顔を向けた。
「いやいやいや、大丈夫大丈夫! こういうことってなかなか言いだせないし、仕方ないよ」
「ごめんね、依麻。……そして、加耶ちゃんはもう泣かないのー」
真枝は小さい子をなだめるように、加耶の背中を撫でる。
そして再び私を見た。
「……依麻、大丈夫かい? 本当に」
「え? 大丈夫だよ、私は!」
「泣きそうな声してる、依麻」
真枝にそう言われ、私は一瞬戸惑う。
泣きそうな声? そんなはず、ない——。
だって好きな人被るのは仕方ないことだし、加耶がこうやってカミングアウトするのにも凄く勇気がいるはずだ。
だからむしろ、私は感謝してる。
——だけど、やっぱりどこかで戸惑っている自分がいる。
「そんなことないよ! 私はもう振られてるんだし、もう諦めてるようなものだからさ」
滲み出そうになる戸惑いを抑え、笑顔でそう言った。
『もう諦めてるようなもの』——?
……どこがだよ、自分。
心の中の自分に一括し、唇を噛む。
自分自身の言葉で、自分自身の首を絞めてるような気がした。