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- Re: *愛迷華* (実話) ( No.88 )
- 日時: 2013/05/21 18:51
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: p17IpJNR)
- 参照: ぼよよよん
第四十四話『皆の好きな人』
複雑な思考の中で一日が過ぎていき、あっという間に日にちが変わってしまった。
学校へ行き、いつものように授業を済ませ——。
放課後の学祭準備中、いつものように仲良しグループで会話タイム。
加耶とは普通に接してるつもりだが、やはり加耶も遠慮をしているのかいつもよりぎこちないことになってしまっている。
……どうしたらいいものか……。
そう思っていると、
「——このタイミングで言うのもあれ、なんだけどね……」
真枝が、口を開いた。
私達は、目を丸くして真枝を見る。
「なになに、なした?」
私が身を乗り出して真枝を見ると、真枝は次第に頬を赤らめた。
「……あのね、私……。孝仁君が好き……なんだよね」
真枝の発言に、私と加耶は思わず顔を合わせてしまう。
孝仁って、あの——……?
「え、同じクラスの里見孝仁?」
「うん……」
ま じ か よ !?
私と加耶の顔色が、次第に青ざめていくような気がした。
多分、今私と加耶が思っていることは同じことだろう。
『あのハチの話が本当なら、マズイ』
いや、本当かどうかはまだわからないけれど——……。
『孝仁が依麻のことを気になっている』
この話が、本当に事実ならば。
私は、加耶だけではなく真枝まで傷つけることになってしまう——。
いやいや、でも絶対嘘だ。
嘘に決まってる。
だって孝仁と接点がある訳じゃないし——……。
「あ、あは、あはははは、」
思わず苦笑い。
私と加耶の心境に気付くはずもない真枝は、更に顔を赤らめる。
そして話を聞いていたあゆと麻里は、真枝の背中を叩いて「応援するよ!」と騒いでいた。
「……ちょ、ちょっとトイレへ……」
私はハチの話を嘘だと信じ、とりあえず一旦席を外すことにした。
廊下に向かおうとした、その時——……。
「……え、」
思わず、目を見開いてしまった。
廊下には、
ハ チ と 可 愛 い 女 の 子 が 二 人 で 話 し て い る
……え、え、え、」
視界に入った現状に、私は戸惑いを隠せないでいた。
誰、あの可愛い子。
もしかして、もしかして——?
ハチの、新しい好きな人?
「……っ」
しばらく見ていると、ハチとその子は違う方向へ行ってしまった。
……ハチ、笑ってた。
絶対、あの子が新しい好きな人だ。
諦めようとしてたつもり、だった。
泣かないつもりだったのに——……。
「……っどうしよう……」
涙が、溢れてきた。
「……あぁぁ、もう……っ」
私は乱暴に目をこすり、涙を拭う。
ハチの好きな人——凄く、可愛かった。
髪が長くてふわふわしてて、目が大きくて。
ハチと距離が近くて——……。
私なんかと、真逆。
「——え、依麻なしたの?」
女子トイレの前で俯いていると、背後から声が聞こえた。
振り返ると、コンビニの袋を持った由良が居た。
「え、なんで泣いてる? なしたなした!?」
「大丈夫、泣いてない」
驚く由良に対し、私は無理矢理涙を止めて笑顔を向けた。
すると由良も小さく笑う。
「嘘でしょ、それ。……てか、これいる?」
「……なにこれ」
「さっきおごってもらったんだけどさ、一本多いんだよね。このアイス。依麻、いる?」
「え、やった! ちょうだい!!」
由良はコンビニの袋からアイスを取り出し、私にくれた。
私はそのアイスの袋をすぐに開けて、由良にお礼を言う。
「ありがとう!」
「いいよいいよ、なんかあったらすぐいいなよ。無理すんじゃないよ」
由良はそう言いのこし、空になった袋を振り回しながら教室へ戻って行った。
一人残された私は、アイスをかじりながら廊下の窓の所へ移動した。