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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *愛迷華* (実話) ( No.92 )
- 日時: 2013/05/25 13:42
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: zXm0/Iqr)
- 参照: ぼよよよん
第四十五話『交わらない関係』
「……あー……」
小さく溜息をつきながら、窓を開けて景色を見る。
廊下は色んな人が準備をサボっていて、騒がしい。
四階から見る景色は綺麗で、空が見えていた。
私はやっぱりハチが好きで。
加耶もハチが好きで。
ハチは、きっとあの可愛い子が好き。
私には向けたことのない、優しい笑顔を向けていたもん。
「……加耶にもなんて言えばいいの……」
もしあの子がハチの好きな人だったら、私だけじゃなく加耶も傷つく。
もう、どうしたらいいんだろう。
そう思うと、また少し泣けてきた。
手に持っていたアイスは外の日差しで溶け、ぽたぽたと床に落ちる。
——まるで、涙と同じように。
「——……泣いてるの?」
突然、後ろからそんな声が聞こえる。
私は慌てて涙を拭い、驚いたように振り返った。
そこに居たのは——……。
「水城、どうした?」
文哉と孝仁、だった。
見れば文哉と孝仁は心配そうな顔で私を見ている。
心配してくれるのは嬉しいけど……。
まず、いつから居た!?
「……な、なんでも、ない……」
私は二人から目を逸らし、とっさに平然を装った。
文哉と孝仁は顔を合わせ、孝仁はもう一度私を見て、
「アイスが目に入ったの?」
こう、呟いた。
孝仁の視線には、私の手に持っているアイス。
私はとっさに、自分の手に持っているアイスを孝仁に突き出した。
「——……っそ、そうそう! 目に入ったの!!」
そう笑いながら孝仁を見る。
孝仁も私を見て、可愛らしい笑顔を浮かべてくれた。
そして文哉を引っ張り、教室へ戻って行く。
……気遣って、くれた?
『アイスが目に入った』という言葉がなんだかおかしくて、そして嬉しくて。
孝仁と話すのはこれが初めてだけど、なんだかすごく胸に響いた気がする。
——だから尚更、ハチの話が嘘だと信じたかった。
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