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Re: *愛迷華* (実話) ( No.93 )
日時: 2013/05/25 13:45
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: zXm0/Iqr)
参照: ぼよよよん

第四十六話『複雑心境』


その日の夜——。
ハチからメールが来ない代わりに、里見孝仁からメールが来た。


内容は『水城さんって好きな人いるの?』とか
『水城さんが彼女だったら楽しいんだろうな』とか
『俺の事どう思う?』とか……。


このままだと、本当にハチの言ってることが真実になっちゃいそうで。
私はなるべく華麗にスルーしたが、孝仁はなかなかしぶとかった。


やっぱり私はハチが好きだけど、もう諦めなきゃいけない。
諦めるのが正解だ。
だけど、なかなかそう簡単にはいかない訳で——。
やっぱり、意識しちゃう私が居る。


そんな悩みとは裏腹に、メールで質問攻めをしてくる孝仁。
そんな孝仁に押され気味になりながらも……。
なんとか私の勘違いであって欲しいと願い、その日は眠りについた。


——という訳で、次の日。


「……依麻、話があるんだ」


放課後の学祭準備中、加耶にそう言われた。
そのまま廊下へ行き、私と加耶は向き合う。
廊下は今日も、相変わらず騒がしかった。


「どうしたの? 加耶」


私がそう聞くと、加耶は俯く。
なんだか少し気まずさが流れながら、私は次の言葉を探そうと必死に考えていた……が。


「……依麻、怒ってる?」


加耶が困ったような顔で、私を見る。
私は思わずきょとん。
そして、すぐに笑顔を浮かべ手を横に振る。


「怒ってる訳ないじゃん、加耶」
「本当に?」
「本当だよ〜! 加耶が気にすることじゃないって言ったでしょ?」


加耶が不安そうに私を見る為、私はひたすら笑顔を向けた。
加耶に怒ってるわけがない。
確かにどうしたらいいかわからないことがありすぎて悩んでいるが、好きな人が被ったぐらいでは怒らない。
ましてや、友達なんだから。


「——……かや、諦めようと思ってたんだ。小八君の事」


加耶がゆっくりと口を開き、私を見つめた。
その加耶の言葉に、胸が締め付けられる。


加耶は加耶で、辛いはずだ。
だから私は、やっぱり落ち込んでる暇はない。
そういう立場じゃないんだ。


「……何言ってんのさ! 好きだったら、諦めちゃダメだよ。私の事は気にしなくていいの。好きなら、好きって気持ちを大事にしなきゃ」


私は声を張り上げ、加耶の背中を軽く叩く。
加耶は驚いたような顔をしているが、やがて私に抱き着いた。


「……そうだよね。依麻、ありがとう……っ!」
「なんもだよ」
「依麻、怒ってるかと思った……。本当に、ごめんね。かや最低だよ……」
「そういうこと言わないの! 私怒ってないし、加耶は最低じゃないよ」


私は笑顔でそう呟く。
……しかし、正直内心は複雑だった。


中学二年生の時にも由良と好きな人が被ったことがあるが、友達と被るとやっぱり悩むしどうしたらいいかわからない。
応援したいけれど、自分も好きだし——。
だけど相手を傷つけたくない訳だし。
当時の時は結局由良も違う人を好きになって、私も壱を好きになった訳だが。
被った時は、やっぱり内心は複雑だった。


今回も、それと同じだ。
友達だからこそ、やっぱり悩む訳で。
一番てっとり早いのは私が諦めればいいんだけど——。


なかなか、諦められない自分がいる訳で。
加耶を応援したくても、これじゃあ逆に加耶に気を使わせちゃうし……。


だから私は、自分の気持ちを押し殺す。
加耶に悟られないようにして、加耶を応援したい。


「皆待ってるから、教室戻ろ! もう私に気を遣わなくていいんだからね?」
「うん……。本当にありがとう、依麻」


私は決心をし、加耶の背中を押して教室へ戻った。
グループの皆は「おかえりー」と笑顔で迎えてくれた為、作業の準備をしようと材料を手に取った。


しかし、


「……ん? 真枝?」


真枝に腕を掴まれ、私は止まる。
真枝は真剣な顔で、私を見ていた。


「……依麻、廊下行こう」
「え、あ、うん、わかった! ごめんみんな、またちょっくら言ってくる!!」


あゆと麻里と加耶にそう伝え、私は真枝と廊下へ向かった。