コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *愛迷華* (実話) ( No.94 )
- 日時: 2013/05/25 15:01
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: zXm0/Iqr)
- 参照: ぼよよよん
第四十七話『傷付く人』
私と真枝は無言で向き合い、俯いている。
最近は廊下が私達の特等席みたくなっている気がした。
「……真枝、どうしたの?」
加耶の時みたいに、私から口を開く。
するとすぐに、真枝は顔を上げた。
「私は……」
「うん」
「加耶ちゃんも依麻も小八が好きなのに……。小八のせいで、二人とも傷つくなんて嫌だ」
真枝はそう言い終わると、唇を強く噛み締めた。
私は思ってもいなかった言葉に、思わず戸惑う。
「わ、私は大丈夫だよ!? 私は諦めてるっていうか諦めるし、今は加耶の方が辛い時期だと思う」
慌てながらもそう言って真枝を見ると、真枝は俯いて泣いていた。
私は更に慌てて、真枝を見つめる。
「ま、真枝……?」
「依麻、強がらないでよ……。好きなら、諦めないでよぉ……」
「……」
「加耶ちゃんも依麻も、辛そうな顔してるよ? 我慢しないでよ……」
「……真枝……」
真枝の言葉が、胸に響く。
——『好きなら、諦めないでよ』
私がさっき、加耶に言った言葉。
それを今、真枝が私に言っている。
諦めるつもりだったのに、難しい。
真枝には全部、見透かされているんだ。
「依麻も加耶ちゃんも辛いのに、私だけ孝仁くんのこと好きな訳にはいかないよ……。もう嫌だよ……っ」
真枝は子供のように泣きじゃくり、目をこする。
私はなんだか少し照れくさく感じながら、真枝の背中を優しくさすった。
「私の事で友達が泣いてくれたりしたこと、なかったからさ……。すごく嬉しい。ありがとうね」
「……私、依麻に隠してたからさ……。加耶ちゃんが、小八のこと好きだってこと……。それでも責任感じてるの」
「いやー、真枝が責任感じることないよ!! なんか、本当ごめん」
——……ごめんね、まえ。
私だって隠してるんだから、真枝は責任感じなくていいんだよ。
謝らなくて、いいんだよ。
加耶もハチが好きで。
だけど加耶は私に気を遣って、加耶なりに悩んで傷ついて。
一方で、ハチはきっと可愛いあの子が好きで。
それで私も加耶も、 傷付いて。
真枝は私達は傷付いてほしくないって、 泣いてくれて。
真枝は孝仁が好きで。
だけど孝仁は——……。
ハチは孝仁と私が付き合うことを、進めてくれている。
「……依麻が謝ることじゃないよ……」
真枝は私に向かって、涙声でこう言ってくれた。
だけど実際、私の今のこの気持ちが皆を傷つけていると思う。
これで私が孝仁と付き合ったら、 真枝が傷付くじゃん。
……といって、 断ったら孝仁が傷付く。
メールしててわかったけれど、孝仁は少し強引だけど私に気遣ってくれたり、本当にいい人だ。
真枝も私の大切な友達だし、真枝が最初に話しかけてくれなきゃ私は友達が出来なかった。
……こんなの、言えない。
加耶にも真枝にもあゆにも麻里にも、言えない。
相談できない。
「……恋愛って、なんでこうなっちゃうんだろうね」
私は真枝の背中を擦りながら、小さく呟いた。