コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- だいいちわ ( No.12 )
- 日時: 2012/11/02 23:39
- 名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: lyYROhnH)
- 参照: コメットは称号【しゅじんこう】を手に入れた!
「ほーら、ごはんの時間ですよー」
わたし——コメット・プリエールはパンの耳をちぎって、鳥さんたちに分けてやります。わたしは毎朝、朝ごはんが出来上がるまでの間にこうしてごはんを与えています。鳥さんたちはそれをせかせかつまんだ後、わたしにいろいろなことを教えてくれます。
昨日、森であったこと、少し遠くまでぼうけんしたら、ステキなものを見つけたこと、森のいきもの——びーすとさんのこと。
びーすととは、この世界に住んでいる、人間ではないいきもののソーショーで、鳥さんたちもびーすとの一部です。
人間はびーすとさんのきげんをそこねないよう、びーすとさんの住む場所とははなれたところで生活しています。
びーすとさんは、食べられるような人にとってユウエキなものもいれば、人々をおそうようなキョーボーなものもいるからです。
なので、わたしたちはよほどのことがない限り(かりや買い出しなど)、自分の村から出ることはありません。
しかし、そんなびーすとさんを仲間にして、ともに戦ったり、くらしたりできるのが、この世界に住むみんなのあこがれ、【びーすとていまー】なのです!
わたしもそのびーすとていまーになりたくて、びーすとていまーの本を読んで勉強したり、びーすとさんを見つけた時に、その生態系をメモしたり、いろいろなことをしていました。
そして、わたしは数日後に、今住んでいる村を出て、わたしの国【ふらいはいと】にあるゆいいつのぎるど【さりえる】で、びーすとていまーになる試験を受けることになりました。
どんな試験なのか、内容はゴクヒとのことですが、きっとオソロシイものなのでしょう……。ここ最近は、キンチョーしてあまりねむれないです。
でも、そのことを鳥さんたちに話すと、鳥さんたちはわたしをはげましてくれるので、とてもはげみになります。
しばらくすると、空からとてつもないスピードで、なにかが落ちてきました。
とはいっても、わたしにはその正体はわかっているんですけどね。
「リネア! おはようございます!」
タカのような外見で、するどい羽をもつ、すいこまれるような深い青の瞳の鳥型びーすと【ぶるーあいず ほーく】——リネアが、わたしにとびつくようにして飛んできました。
リネアは昔からいっしょにすごしていて、わたしの一番のお友だちです。
首もとをなでてやると、きゅーきゅーいって甘えてきます。もうとっても和みまくります……くるるー。
「今日はじょうきげんですね、リネア。何かあったんですか? ……なるほどー。それははっぴーでしたね!」
どうやら、たまたま森で大きな木の実が見つかったそうです。とても美味しかったらしいので、今度わたしも食べてみたいです!
……あ、そうそう。今のは作り話じゃありませんよ。わたしには、びーすとさんとお話できるっていう、特別なのーりょくがあるんです。
そういうのーりょくを、【すぺしゃるすきる】といいます。すぺしゃるすきるはほんの一にぎりの人間しかもっていません。生まれつきもっているものなので、後からすぺしゃるすきるほゆーしゃになることは出来ません。
——ちなみに、【すきる】の場合は後でシュートクできますが、それはまた後の話。
びーすとていまーになれる確率も低いですが、その中でもすぺしゃるすきるを持っているのはごくわずか……それほどめずらしいものなのです。
でも、最初はわたしもそんなことは知りませんでした。会話ができるなんて当たり前だと思っていたから、それがすきるだと知ってとってもビックリしました。
そのことを教えてくれたのが、わたしのあこがれの人で……
「おはよ。コメット」
「!! エルにぃ、おはようございます!」
びーすとていまーのトップランク、びーすとていまーなら誰でもあこがれる【ますたーらんく】のびーすとていまー、【エル・クレマシオン】さんです!
エルにぃはわたしの家のすぐとなりに住んでいます。この村にはびーすとていまーはエルにぃしかいないので(大抵はどこかにショゾクしているので、村でふつうにくらしていることの方がめずらしいです)、エルにぃにはいつもお世話になっています。びーすとていまーの先生だなんてすごいですよね。しかも、エルにぃはますたーらんくですから!
「どうしたんだよ、そんなに嬉しそうにして、お兄ちゃん照れるだろう。よしよし」
エルにぃはおっきな手でわたしの頭をなでてくれます。エルにぃのあたたかい手がとっても大好きです。……そうしている時のエルにぃの表情が、心から安心しているみたいだから。
「くるるー、別になんでもないですよっ」
「そうかー? まあ、俺は満たされてるからいいんだけどなー。本当に可愛いなぁコメットはぁ」
エルにぃは本当に幸せで満たされているような笑顔でわたしをなでつづけると、そんなエルにぃのはいごに、わたしのママがニオーダチしていました。
「ママ!」
「エ・ル! いい加減そのロリコン治さないと犯罪者になるわよ、ほらほら娘から離れて」
「悲しいですね。これはスキンシップですよいでで耳たぶは痛いです」
ママはエルにぃをムリヤリおいやった後、にっこり笑ってわたしの頭を軽くなでました。
あざやかなマーマレードのかみの毛のママからは、ネンレイを感じさせない若さがでています。笑顔もヒマワリみたいにきれいで、わたしはママがとっても大好きです!
「さ、朝ごはんできたから食べましょ。折角だからエルも食べてく?」
「じゃあお言葉に甘えて。朝から野暮用があって何も食べてないんですよねぇ」
「どーせアンタはそこら辺ブラブラしてたんでしょ。……さ、コメット。手を洗ってうがいをしてね」
「はい!」
わたしは鳥さんたちにお別れのあいさつをした後、とてとてと走って、せんめんじょに向かいました。
*
「な、なんとっ、これは、デンセツの、ハニートーストですね! くるるー! 朝からはっぴーです!」
わたしは目の前に広がるゴチソウを前に、しばらくきゃっきゃとこおどりしました。
わたしはあまいものが大好きで、特にママの作るハニートーストは大好物なのです! とってもノウコウで、あまくて、ああたかくて……。
「喜んでもらえてよかった。張り切って作った甲斐があったわ」
ママはそう言って、なんとチョコレートシロップを用意してくれました。
いつもはたのんでもなかなかハニートーストを作ってくれないママが、チョコレートシロップを出すなんてメッタにないことなので、わたしはビックリしました。
「え……いいんですか? こんなこと、タンジョービじゃないと、」「いいのよ。ほら、おかわりもあるからどんどん食べなっ」
「はい!!」
わたしはただ、やみくもに(それでもオギョーギよく)食べ進めます。
「やれやれ、これだから親バカは……気持ちは分かりますけど」
「なによ、その呆れ顔。あんたにされると腹立つわね」
「うわ、ひどっ……よそん家の未成年の青年だというのに……。ていうか、せめて出発の日でもよかったんじゃないんですか? それに落ちる可能性だってあるし、受かってもその夜には帰ってくるんですから」
「そうなんだけどさ。……コメットはいい娘だから、辛い事があったり、寂しくなったり、ひもじい思いをしたりしても、我が儘も文句も言わない——それはあんたが一番よく分かってるでしょ? まあ、なんていうか、その罪滅ぼし? いや、違うわね。せめて、あの娘に幸せいっぱいの思いで出発してもらいたいのよ。————————だから」
「それならよかった。……責任持って守りますから、ずっと」
「そんな事言って、この事発案したのはあんたの癖に。……まあ、あたしはもう幸せ沢山もらったから、後はエルの好きにすればいいわ。変に襲ったりすれば殺すけど、ロリコン」
「目がマジですから、しませんから、ていうかロリコンでは断じてありませんから」
「ったく、白々しい……。あら、コメットおかわり?」
「はい! 今日はたくさん食べますっ」
わたしは目をかがやかせてそう言います。
ママはくすくすと笑った後、おかわりをすっと出しました。
——しかし、さっきの二人の会話は一体なんだったのでしょうか。なんだかさびしそうな顔をしていて、わたしはどうすればいいのかわからず、ただひたすら食べていました。
(それが正しいセンタクだったような気がします)
そうして、わたしは二枚目も残さず食べて、「ごちそうさま」と言いました。