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Re: お前なんか大嫌い!!-勘違い男たちの恋- ( No.101 )
日時: 2014/04/17 22:26
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Qvi/1zTB)

 前回までのあらすじ〜☆


 昴に幽霊が取り憑いた。
 翔がそれを祓おうとした。
 2人でいつも通り喧嘩。


 今北産業の人はぜひ戻って読んでみよう!



 ぜぇはぁ、とかなり長い間喧嘩をしていた為、2人はかなり疲れていた。膝をついて肩で息をするほどに。
 特に昴は、これはおかしいと感じ始めていた。
 椎名昴というヒーローは、底なしの体力と怪力を誇るヒーローだからだ。何でこんなに疲れるのだろうか。謎である。きっと背後に張りついている幽霊の仕業だ。

「……いい加減、大人しく、していろ……!」

「やな、こった……! 体が重いッ!!!」

「その幽霊が乗っているからだ! 大人しくしていろと言っているのに!!」

 いや、身の危険を感じたら誰でも大人しくできないと思う。
 何度でも言おう。昴と翔は犬猿の仲だ。お互いが大嫌いで、「死ねばいいのにていうか殺す」と思っているほどだ。
 だというのに、このクソ死神は一体何を考えているのやら。恩を売って返してもらおうとでも思っているのか知らないが、とにかく幽霊を祓えとうるさい。うるさいったらうるさい。
 何が目的だと言わんばかりに睨みつければ、翔はフンと鼻を鳴らした。

「テメェを殺すのはこの俺だからな。幽霊にかすめ取られてしまったらたまったものじゃない」

「どさくさに紛れて幽霊ごと俺を燃やそうとか思ってんじゃないだろうな。心の片隅にでもそんな思いがあったら全力で応戦させてもらおう」

「そんなことある訳ないだろう。ただ恩を売って、お礼としてシュークリームを作ってもらおうと」

 こいつは本当に甘いものが好きだな、オイ。
 昴は額を押さえてため息をついた。どこまでも欲望に素直な奴だ、面白いぐらいに。
 だがしかし、それぐらいで命が救えるのならお安い御用。昴は案外料理が上手いのである。喫茶店でアルバイトをしているが、期間限定のお菓子を作っているのである。もうヒーロー辞めてパティシエになれよ。そしたら翔と和解できると思うから。
 一時休戦と宣言し、これ以上喧嘩をしないように保険として雫を間に入れた。

「それで、俺の背後にいるこの幽霊さんは一体何なんだよ? 真っ黒焦げなんだけど」

「おそらく火事か何かに巻き込まれて死んだ奴だろう。顔が原型を留めていないぐらいに黒い。さすがの俺でも黒い人間としてしか認識できない」

「うちもそうだよ……何なの昴。何か変な人でも食べた?」

「ふざけんな。俺はカニバリズムなんか持ってねえよ……あ」

 そういえば。
 あの時、バイトの帰り道。深夜、家の前に現れた謎の人。姿が見えなかったが、不審者だと思って殴ってしまったあいつ。
 あいつを殴ってから、幽霊か何かと言われるようになったのだ。絶対にあいつが原因だ。
 昴が「あ」なんて言ったから、翔と雫はそろって首を傾げた。

「どうした」

「バイトの帰りに不審者殴ってからこんなことになった。昨日ぐらい」

「……」

 翔の瞳は物語る。「昨日でこうなるのか」と。その瞳に応えてやりたかった、うるせぇと。
 昴はチッと大きな舌打ちをしてから、明後日の方向を見上げた。もうそうするしかなかった。

「何が原因なんだろうねぇ? その人が現れた理由的な」

「さあな。とりあえず、その幽霊を燃やす。じっとしていろ、上手く焼けねえから」

「お前は人類最強の兵士長か!?」

「人類ではないな。最強ではあるが。山本雫、そいつを羽交い絞めにしろ」

 雫は昴の後ろに回ると、羽交い絞めにした。
 別の意味で暴れたくなった。何故なら、雫は女の子だから。さらに明確に表現するなら、胸が当たるのだ。背中に。
 小ぶりながらもふっくらとした柔らかい女性の象徴が、ぎゅうと背中に押し当てられる。やっべこれ、どうしたらいいんだこれ。
 その時である。


「うぉぉぉおおおおおおお」


 あれ、何か聞こえた。
 うめき声的なものが聞こえた気がする。
 そろり、と振り向いてみると真っ黒焦げの人間が、真っ黒焦げの口を大きく開けていたのだ。至近距離に。
 ——あ、俺死んだ。

「…………ふぅ」

「あれ、昴? おーい!?」

「おいポンコツヒーロー、気絶するなおい!!」

 本日2度目のブラックアウトを経験した。