コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: お前なんか大嫌い!!-勘違い男たちの恋- ( No.20 )
日時: 2012/12/13 23:12
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: Mj3lSPuT)

 そこからの逆転劇はすさまじいものだった。
 椎名昴は戦隊ヒーローにはない『怪力』という武器を持っている。
 東翔にはラノベの主人公並みの『死神』という位置にいる。
 この2人はお互いを敵として認識し、そして倒す・殺す相手だと思っている。
 では、この2人が————協力したら、一体どうなるのだろうか?


「飛んでけぇぇぇぇぇええええ!!」


 椎名昴が手近にあった10階建てのビルを根こそぎ持ち上げ、怪獣へと叩きつけ。


「くたばれぇぇぇぇぇぇええええ!!」


 東翔が天をも焦がさんとばかりに噴出する炎を操り、怪獣へと襲いかかった。


 お分かりだろうか。片や本気を出せば地球を壊せるぐらいの怪力を持つヒーロー。片や本気を出せば地球を焦土と化せるぐらいの炎の力を持つ死神。
 答えはそう、地球の危機だ。

「テンメェェェェェ! 椎名昴ゥゥ! そんなとこにビルを叩きつけるんじゃねぇよ、邪魔だろ破片が! テメェの脳みそは筋肉でできているのか?!」

「熱っ! あっつ!! こっちに火の粉が飛んできているんだけど! うわ、制服が焦げてる! 弁償しろとか言われたらお前に請求書を送ってやるからな! 覚悟してろよ!」

 そして戦いながら舌戦を繰り広げるという器用な技も見せてくれている。さすが!
 昴は降りかかってくる火の粉を払いながら、街路樹を力任せに引っこ抜き、砲丸投げの要領で怪獣へと投げつけた。
 しかし、その進行方向へ翔が飛び込んできたのだ。もう手から離れちゃっているので止めようもない。哀れ、翔と一緒に街路樹は怪獣の腹へクリーンヒットした。

「……あ、ゴメーン」

 超棒読みで謝る昴。ちなみに昴に悪気はない。そこへ飛び込んできたあの死神が悪い。
 翔は街路樹をはねのけて、鬼のような形相で昴を睨みつける。怖い。というか、そのまま視線だけで人間を殺せそうだ。

「……殺す。絶対に殺す」

 舌打ちと共に吐き出された言葉は、殺意に満ちていた。赤い鎌を上段に構え、空中で振る。昴の方へ炎の刃が飛んで行った。

「うわ!!」

 昴は何とか身をひねって飛んできた炎の刃を回避するが、それでも翔の猛攻は止まらない。怪獣へ向けろとでも突っ込みたくなるが、今の翔は自制が効いていない様子である。

「テメェ! その力を怪獣へとぶつけろよ、何で俺の方にぶつけて来るんだよ! どうしてだよ?! コラ!」

「抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺抹殺撲殺惨殺銃殺斬殺溺殺殴殺抹殺」

「やべぇこいつ怖い」

 目がマジなんですけど、と思いつつ、昴は攻撃してくる翔へ向かって拳を叩きつけた。ある意味本気の。ゴキィ! という音がして、人間ならば頭蓋骨が陥没する勢いで殴られたのにもかかわらず、翔は立っていた。
 若干目が据わっている翔は、ゆらりと顔を上げる。昴を見つめる。「殺す」などとトランス状態でつぶやいていた口を閉じ、舌打ちをした。

「何でこんな奴に目覚めさせられなきゃいけねぇんだよ」

「いや、それはこっちの台詞だから。——つか今のトランスモード、一体何? 王子特有なの?」

「馬鹿め、違うわ。あれはもともとだ。死神は誰しも本性は『人ぶっ殺す』だからな。テスト出るから覚えておけよ」

「嫌だわ、そんな常識テスト。自販機の使い方も分からずにとりあえず取り出し口に鎌突っ込んでい首傾げているどこかの死神さんにあったぐらいに嫌だわ」

「……何でそれ知ってんだ?」

「知っているか? 俺はコンビニで10時まで働いているんだぜ?」(ドヤァ

 一方、置いてけぼりを食らっている怪獣は、頭を爪でぽりぽり掻いてから、

「なぁ、地球壊していいの? マジ壊すよ?」

 などと舌戦を繰り広げる2人に問いかけた。
 当然、答えなんか返ってくる訳が————


「「ふざけんなよこのボケ野郎がぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」


 雄叫びを上げて、昴は拳を、翔は鎌を振り上げて怪獣を攻撃した。ズドン! という音が空気を震わせ、怪獣が空中を舞う。

「テメェが地球を壊したら、誰がその地球を生き返らせると思ってんだ。この俺だぞ」

 翔は鎌を垂らすように構え直し、炎をともす。その炎は、地球を焦土と化してしまうぐらいに強力な炎である。

「誰がその地球で生きていくと思ってんだ。俺ら人間だぞ。人間様はお前ら怪獣よりか優れているんだよ」

 昴は弓矢を引くように身をひねり、拳を握る。その拳は、ビルをも簡単に吹き飛ばすぐらいの強大な力を宿している。
 嫌な予感がした怪獣は、降参するべく声を上げようとした。
 しかし、何もかもが遅かった。

「死神を————!」

「ヒーローを——!」

「「なめるなぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」」


 拳と鎌が叩きつけられ、今度こそ怪獣は強制的に宇宙旅行へと出かけて行った。
 そして、怪獣は二度と帰ってくる事はなかった。