コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: お前なんか大嫌い!!-勘違い男たちの恋- ( No.39 )
- 日時: 2013/01/31 22:19
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
ヒーローそして死神それから姫君は、まとめて神崎学園1怖いゴリラ教師・堀川に怒られた。ちなみにあだ名はゴリ川である。
昴は未だにしびれる足をさすりながら、生活指導室をあとにした。律儀に「失礼しました」と言うのも忘れなかった。
一方の翔は、舌打ち交じりに「絶対にあいつは殺してやる……。ポンコツヒーローの前に殺してやる」と言っていた。下手したらゴリ川が危ない。殺されてしまう。
それから雫は唇を尖らせて、「何でうちまで怒られなきゃいけねぇんだよー」とぼやいていた。いや、お前が元凶だから。
ゴリ川の説教は耳に痛かった。ものすごい剣幕で怒鳴られたものだから、これは従わない訳にはいかない。というか、この3人は神崎学園に通っている為に、ゴリ川とは交流があった。
特に昴の場合はすみれとして生活指導を受けている事が多々ある。茶色い髪ダメですか、地毛なのにというやり取りはひそかに有名だ。
「……お前のせいだからな、山本雫」
「何でうちのせいなの?!」
「学校で襲ってくる馬鹿がどこにいるよ! このまま本当に月まで強制送還してやるぞ!!」
相手が女だという事を忘れて、昴は雫の胸倉を掴みあげた。
すると、その衝撃で雫が被っていたフードがパサリと音を立てて落ちる。
——ふわりと、青い髪が揺れた。
何というか、アニメの世界から飛び出してきたのではないかと錯覚するぐらいの美少女がここにいた。
椎葉すみれを動の美人、瀬野翔子を静の美人だと評するならば、目の前の少女は『2次元美人』とでも表現しよう。そう表現してもおかしくないぐらいなのだから。
空を映したかのような青く美しいロングヘア。パッチリとした二重の瞳は、鮮やかな濃紺の色をしていた。小さな顔にはすっと通った鼻筋に、桜色の唇が絶妙なバランスで配置されている。まさに美少女であった。
ぽかんとした表情で、胸倉を掴んでいる少女を見下ろす昴。あれ、誰?
「……本当に山本雫か? そいつ」
後ろから白い手帳を出して『堀川努(ホリカワ/ツトム)——ゴリ川の本名』のページを開いていた翔は、怪訝な表情で口を開く。
「え?! 山本雫?!!」
「……」
目の前の少女は何も答えない。でも、この胸倉を掴んでいるのが山本雫ならば——
「……み、」
少女は形のよい唇を開き、震える声で言葉を紡いだ。
「————見ないでぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええあkkだfんcndwfwんfdskjcなしvnidあjgなkhてvqtじぇんkjlり!!」
後半は声になっていないが、少女は昴の腕を振り払うと慌てた様子でフードを被りなおした。知っている山本雫に戻った。
ふぅ、と一息ついた雫は、キッと(多分フードの下で睨んでいる)した目つきで昴を睨みつけた。
「女の子の胸倉なんてよく掴めるね!! 君はあれなの、変態なの?!」
「ちが……変態じゃねぇ!」
「え、ポンコツで変態ってもう救いようがねぇぞ?」
「だからポンコツでもねぇよ、変態でもねェよ!! 人の話を聞けぇぇぇぇえ!!」
ドンッ! と足を踏み鳴らしたので、辺り一帯に震度2の地震を引き起こしたのは言うまでもない。
雫は舌打ちをすると、そのまま玄関の方へ向かって歩き出した。
「お前、学校はどうするんだよ」
「今日は帰る。このまま授業を受けてもなんか変な扱いを受けそうだから」
そう言い残して、雫は雑踏の中へ姿を消した。
昴は大きな欠伸をしてから、自分も今日は学校を休もうと思った。もう戦う気もない。バイトしていた方がまだましだ。
翔もグッと伸びをしてから、学校に行かない事を決めた。今隣には好機と言わんばかりにポンコツヒーローがいるが、何か今倒す必要なさそうだから。
「……俺も帰ろ」
「……仕事しよう」
互いのつぶやき声は、聞こえなかった。とりあえずだるかった。