コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: お前なんか大嫌い!!-勘違い男たちの恋- ( No.80 )
- 日時: 2013/10/31 21:51
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: RXnnEm2G)
白鷺市のヒーロー、椎名昴には同居人がいる。
1人は甘党飴。ゆるゆるのしゃべり方が特徴的な、空手少女である。昴の幼馴染であり、いつも飴をたくさん持っている。
そして橘理人。基本的に変態思考、女の子がいる前で平気でAVやらなんやらを見ちゃったりしちゃう引きニート男子高校生。ハッカーである。
最後の1人は——いや、2人は、結城小豆とポチ・リベントゥレーユアンソワレである。長ったらしい、実に長ったらしい名前であるポチ。
結城小豆は孤児院を脱走した経歴を持つ少女である。見た目は6歳児であるが、中身は16歳——立派に昴と同い年な訳である。
そんな少女と一緒に脱走してきたのが、小学生が描いた落書きのような三毛猫・ポチである。本人いわく「ワレは1800年後からきた地底人や」らしい。この世に地底人などいない、と家主に言われたのだが。
孤児院から逃げてきて行くあてがなかったところを、昴に助けられたのである。今では立派な引きこもりになってしまった小豆とポチだった。
さて、これより開始するのは——この2人が死神と戦った記録である。
「じゃあ、俺はバイトに行ってくるからね。小豆ちゃん、それとポチ。大人しくしてろよ。理人が何かしてきたら、遠慮なく下剤を飲ませてやれ」
「心配しないで!! そういう時はポチがいるから!!」
満面の笑みで答える可愛らしい少女——結城小豆。こうしてみると、本当に6歳児である。
彼女に抱えられている不細工な三毛猫、ポチも「わてに任せとキ」などと言っている。気持ち悪い事この上ない。昴は早くもポチの口をふさぎたくなった、割と全力で。
今日は飴はいない。登校日らしくて、朝、慌ただしく出て行った。「はわわわわわわ学校だったー」などと言っていた。それを小豆は思い切り笑っていた。
「じゃあ、行ってくるからね。——理人。小豆ちゃんになんかしたら殺すからな。その時は」
「分かってるってー。気をつけてねー」
ひらひらと手を振りながら、奥でエロ動画を見ている理人を睨みつける昴。お前は親か、いや親代わりだけど。
最後にポンポンと小豆とポチの頭を軽くなでてから、部屋を出て行った。
本日は土曜日。昴はバイトである。確か、テリーがよく行く喫茶店で1日中ウェイターをするのだとか。昴の怪力で雇ってくれる喫茶店なんてあったんだなー、とか思ってみたりする小豆だった。
理人は自分の世界に入っちゃって帰ってこないから、1人で新薬の研究でもしていようかと思った小豆。卓袱台の上に薬品を広げて、ポチと一緒になって研究を開始する。
「ねー、次はカップケーキに腹を下す薬を入れたらいいと思うんだ。バファ○ンなんかどうかな?」
「くっそまずそうやナ。腹下すゾ」
「それがいいんでしょー」
嬉々として薬品を調合して、カップケーキ(下剤入り)を完成させる小豆。これ一体どうなの、見た目6歳児がやっていい事なの。いや、中身は16歳だけど。
ポチもポチで、尻尾のドリルをぶんぶん振り回している。危ないったらありゃしない。先ほどからバシバシ理人に当たっている。が、当の本人は気にしている様子もない。
理人はお勤めに忙しいので、ちょっとこれはおやつで置いておこう。きっと帰ってきた飴が食べるだろう——昴には何故か効かないのだが。あいつの体は何でできているのだ。
すると、隣がやけにやかましくなった。誰かが帰ってきたのか。
耳を澄ますと、ハスキーな声と俺様口調。
「何だって土曜日に出勤せねばならない。もう少し寝させてくれてもいいだろう……」
「仕事は年中無休ですよー、ほら行ってくる行ってくる」
「チッ。クソ怠い」
最近昴が戦っているという噂の死神だろうか。女顔死神。
ふむ、と小豆は顎に手をやった。これはチャンス、少し死神をからかってやろう。なに、少しだ。殺すまでもない。
理人は気づいていない。ポチと協力してドアの施錠を静かに外して、廊下に出る。古ぼけた階段を今まさに降りようとしている女の子のような男がいた。しかも背の高い男性を連れている。
昴が言うには、死神は年中無休で仕事をしている。怠そうな顔をしているので、これから仕事だろう。ザマアミロである。心の中で舌を出した小豆。
「フフフ、これでちょっと困らせてやるんだもんね」
小豆が取り出したるは、ピンク色の液体。中身はヌルヌルのローション(お手製)である。市販のローションより3倍ぐらいヌルヌルする。
それをそっと2階から垂らす。
直後、ゴンドンガンガンッ!! そして悲鳴。
「痛ェッ!! おい、出雲。俺の上からどけ!! 何をしている!!」
「死神の癖にこけるんですね。ていうか痛いです、鎌の先端でつつかないでください」
思わず笑いが込み上げてきた。よし、いたずら完了。
さて部屋へ戻ろうとしたその時、がっしりと頭を掴まれた。何かと思ったら、優しそうなお兄さんがにっこりとした笑顔で立っていた。
「翔様に何をしているのかなー? お嬢さん?」
「あららヤベー」
少しもやばいと感じていないような小豆は、自分の頭をがっしりと掴んでいる優男——悠太へ向かって催涙スプレーをお見舞いした。唐辛子の30倍の威力がある。
悠太は「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」と悲鳴を上げて、廊下をのた打ち回った。その隙に、小豆はポチを連れて部屋へと飛び込む。
これは楽しい。次は何のいたずらをしてやろうか。
小豆とポチの戦いは、まだ始まったばかりである。