コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【準・恋愛小説】ラムダ君と有意義な生活 ( No.2 )
- 日時: 2012/11/04 17:01
- 名前: 粉雪百合 (ID: gJM7cnIU)
一話
『ラムダ君と私の趣味』
先「おーい、シータ嬢」
θ「あ、センセ。どうしたんですか?」
職員室前廊下、不意に私を呼び止める声がした
ふりかえると私のクラスの担任教師であった
『シータ嬢』というのは私の渾名である
いつ付いたのかも思い出せないし、あまりにも浸透しすぎたため、教師までもがこの名で呼ぶ
先「すまないが、コレを教室まで持って行って、教卓の上にでも置いておいてくれないか?」
θ「わかりました」
先「さすがは学級委員長。頼りになるな」
θ「それは関係ないと思いますが・・・とりあえず、持って行っておきますんで」
私は踵を返すとプリントの束を抱えて階段をゆっくりと上る
高等部第一学年学級委員長、椎田結菜。
これが、今の私を指し示す、本名である
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昼休みになると、教室はがらんとしたものである
残っている人間は、机に突っ伏して寝ているヤツ、本を一心不乱に読んでいるヤツ、鞄の中でゲーム機をいじっているヤツ、鬼の補習を恐れて単語帳を必死でめくっているヤツ
ざっとまぁこんなものである
θ「・・・」
私は、教卓の前で眠りこけているヤツを起こさないように、そっとプリントの束を置く
男子しか見受けられない教室で一人、私は自分の席に着く
机の中から取り出したのは、絵の束。
見る人が見れば、原稿用紙に書かれた漫画の原稿だということに気付くだろう
窓際後ろから二番目の私は、誰から見られる心配もなく描きかけのそれにシャーペンを走らせる
もっとも、席順など関係なくとも、ここには自分のことで手一杯なヤツしか残っていないのだが
唯一の心配は後ろのヤツだが、背中からじゃ真面目に勉強しているようにしか見えないだろう
まさか、学級委員長が休み時間に漫画を描いているなんていう状況、誰も想像しないだろうから
これは、趣味で描き始めたモノである
思ったより出来がよかったので、動画サイトにアップしてみたところ、何故かすごくうけた
最初は1本で終わるつもりだったが、反響のよさに気をよくして、続編を出してしまったのだ
よって未だにこいつを描いているという状況である
θ(・・・学校でも描かないと追いつかないとか・・・おそろしい人気ぶりだよなぁ・・・)
せっかく付いた読者を手放すわけにもいかないので、彼らが飽きる前に次作を上げる
そんな毎日である
θ(でも、まぁ、あと3,4話で潮時かなぁ・・・。つか疲れた・・・)
実を言うと、絵を描くのはそんなに速くない
さらに一枚にものすごい集中力を使うので、疲労感というのは想像を絶するものになっている
?「シータ嬢、」
θ「っぅわ!?は、はい!?」
突然背後から声を掛けられ、素っ頓狂な声を上げてしまう
とっさに描いていた原稿を裏返し、相手の目から覆い隠す
ω「ごめん、驚かせた?」
θ「なんだ・・・メガ君ですか・・・」
後ろに立っていたのは、隣のクラスの学級代表、猫島芽雅である。ネガ、オメガ、などという渾名で親しまれている
首から一眼レフのカメラを引っさげているところを見ると、クラブ帰りだろう。新聞部も大変だ
θ「どうしたんですか?」
さっきの悲鳴からは想像できないような柔和な笑みに、柔らかで品のある物言いで彼に尋ねる
学校での私はあくまでそういうキャラであり、漫画を描いているなどという事実は押し隠さねばならない
ω「ウチの先輩が呼んでるんだけど・・・」
θ「あぁ、そういえば、昼にインタビューに答える約束だったんです。知らせてくれてありがとう」
ω「いえいえ」
今思えば、この完璧な演技と身のこなしが『〜嬢』という渾名に結びついたのかもしれない
私はそう思いながら、マイクを握った美人の先輩(♂)のところへと向かった
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思ったより、そのインタビューは長引き、5限目のチャイムぎりぎりに教室に滑り込むことになった
もちろん、息が上がっていることなど微塵も感じさせない完璧な演技つきで
私が席に着くと、例のプリントが配られた
へぇ、『竹取物語』だったのか・・・
後ろにプリントを送ろうと振り返ると、彼は小説を読みふける格好のまま爆睡していた
仕方がないので机と腕の間にプリントを裏返したまま滑り込ませる
いちいち起こすのも面倒だし、これでいいや
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