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Re: 【準・恋愛小説】ラムダ君と有意義な生活 ( No.6 )
日時: 2012/11/06 22:30
名前: 粉雪百合 (ID: gJM7cnIU)

二話
 『ラムダ君と相方』



λ「おはよう、シータ嬢」

λ「何やってんの?・・・単語?」

λ「今日、鬼の小テストあったっけ?なぁ、シータ嬢」

λ「やばー、単語帳忘れたー!シータ嬢、ちょっと見せてくんない?」

λ「シータ嬢?」

λ「おーい、——」

θ「うるっさいっっ!!ちょっと黙っててくれませんかねぇ!?」

 朝からまとわり付く背後の君に、私は体裁を気にする間もなく怒鳴りつけた

 と、いうのも現在の時刻は7:45。
 まだ、数人の生徒がちらほら登校してきた程度で、サボり屋が多数在籍している1−Bには、まだ2人しか姿が確認できていない
 そんな静かな朝の時間を恐怖のテストを迎え撃つための準備に当てていた私は、この不意打ちに苛立ちを隠せずにいた

θ(大体コイツ・・・友達になろうって言って一朝一夕でなれるヤツが存在するとでも思ってるのか・・・?)

 早朝とは思えない謎のテンションを保有するラムダ君に、私は怪しんでいるとも取れるジト目を向ける

λ「まぁまぁ、シータ嬢。安心して勉強してて。俺は根性で何とかするから」

θ「・・・根性じゃ無理でしょ」

 せっかくの朝が台無しになった気分だ
 早くも昨日までの生活に戻りたいとさえ思う

θ「・・・っていうか、今日は何でこんなに早く来たの?」

 よく考えてみれば、昨日までこの時間帯は私しか来ていなかった
 しかもラムダ君はいつも朝礼のチャイムと同時に教室に滑り込む、遅刻ギリギリ常習犯のはずだ
 珍しい。本当に槍でも降るんじゃないかな

λ「10日連続遅刻記録により、1週間の早朝登校を申し付けられました☆」

θ「・・・なるほど。」

λ「いやー、8:00までに職員室に行ってスタンプ貰って来なくちゃいけないんだよねー。・・・一回でも抜けたら若旦那の説教と鬼の補習のコンビを受ける羽目になるんだよねー・・・」

 地獄だ
 若旦那(体育実技教師。ワンダーフォーゲル部顧問)の説教だけでも気を失う生徒が続出するというのに・・・

θ「あれ?でも、ラムダ君が早朝登校なら、いつも一緒にいるあの子・・・えーっと、なんだっけ?」

λ「ガンマ?」

θ「そうそう、ガンマ君。彼も来なきゃいけないんじゃないの?」

λ「そういや来ねぇなぁ・・・。あと2分で若旦那+補習決定だな♪」

θ「・・・楽しそうだね。」

λ「おう。俺はアイツが不幸になることを心の底から願ってるからな」

 にやり、とラムダ君はいたずらっ子がよく見せる、きらきらとした笑顔を浮かべていた
 どこまで冗談なのかと思ったが、仲がいいもの同士の憎まれ口を自分が理解できるはずもない
 そう。とだけ呟いて、私は再び単語帳へと視線を落とした
 刹那——


γ「せぇぇぇぇええええええいっふぅぅぅううう!!!!」


 ズバァン!!と教室のドアが勢いよく開かれ、謎の爆音が鼓膜を揺すぶった
 何事かと、廊下を歩いていた生徒のみならず、教室にすっこんでいた勤勉家どもまでもその音の正体に目を向ける

 狐目に黒いお坊ちゃん風の髪型。背は平均的だが細身。肩に引っかけただけの制カバンには、エメラルドグリーンの髪をした少女の人形がぶら下がっている

λ「頑真・・・」

γ「ぃよう!ラムダ!!間に合ったぜぇい!」

 徹夜明けを思わせるハイテンションな言動を見せる彼——橋沢頑真は、呆然とするラムダ君の背を叩く

λ「なんだ・・・絶対間に合わないと思って期待してたのに・・・」

γ「流石の俺でもあのコンボは受けなくないぜぃ?期待というものは裏切るためにあるのさベイベー!!」

λ「ほんとにもう朝からそのテンションやめろよ!?うぜぇ!!」

γ「ふははは!何のことかね、ワトソン君」

λ「3分待ってやる。即刻この場から退去してもらおうか^言^」

γ「たわけ!くたばるのは貴様だ!!」

 怒涛のアニメキャラ声真似大会を開催している2人を前にして、私はただ黙るしかなかった


+++++++++++++++++++++++++


 10分後。
 いい加減言い合うのも疲れたのか、他の生徒たちが登校しだしたからか、2人は息を切らしながらもやっと静かになった

θ「大丈夫ですか、ガンマ君?」

γ「おー、シータ嬢・・・俺は大丈夫ッス・・・!!」

 朝からこんな調子で、本当に大丈夫なのだろうか
 よく一日これでスタミナが持つなぁ、と、つい変な方向で感心を覚えてしまう
 ガンマ君は私の斜め後ろ——つまりラムダ君の隣の席に座ると、私が開いているのと同じ単語帳を取り出した

λ「お前、マジか!お前に単語の勉強をするっていうスキルが備わっていたのか・・・!!」

γ「てめぇ、もう帰れ!!見せてやんねぇぞ!?」

 嘘ですごめんなさい。と高速でラムダ君が謝ると、ガンマ君は席をくっつけて2人で小さな単語帳を覗き込む


 ほんと、このコンビ、仲がいいのか悪いのか・・・