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Re: 泣き虫ヴィーナス!−兄弟喧嘩は他所でやれ!!−キャラ募集中! ( No.18 )
日時: 2013/01/09 01:28
名前: 粉雪百合 (ID: wAE.Fy2c)

6話『ちゃんとしろよ!』



 俺は今、更地になった街を眺めている。

美「うわぁああん・・・!ぁう、あぁあぁああ・・・!!」

 泣きじゃくる美衣名の声が、遠くに聞こえてくる
 ワイドな窓に切り取られた黄土色の背景に、美衣名の背中がぽっかりと浮かんでいた
 それを、ただ、呆然と。
 眺めるしかなかった。

充「っぶなぁ・・・吹き飛ばされるところだった・・・」

 ふ、と窓の上部から充の姿が現れた
 右手には、真亜豆の巨剣が握られている
 そんな世界の神様は、呆ける俺をちらりと見ると戦利品を放り投げる

充「ほら、農土。喰べていいよ」

 今度は下から、フリスビーを投げられた犬のように、農土が剣に喰らい付く
 その、バリバリという効果音と美衣名の泣き声をBGMに、充は埃っぽい部屋に舞い降りた

充「大丈夫かい、大地君」

 とん、と肩に手を置かれ、俺はやっと我に返った

大「こっ、これ・・・っ!街が・・・!!」

充「あー、ごめん。美衣名はキレると力の制御が利かなくなるんだ」

大「・・・どういうこと・・・?」

充「神様の持ってる超能力の塊みたいなのが体から溢れちゃって、こう、ばーんと大爆発を起こしちゃったわけ。その力であおりを受けて、周りのものが吹き飛んじゃったんだ。やー、よかった。大地君生きてて。美衣名も悪気は無いから許してやってよ」

大「許す・・・って、街一個吹き飛んだんだぞ!?」

 理解した瞬間、激昂する俺に、充はいつものように微笑んだ


充「大丈夫。僕は天界一の神様だよ」



+++++++++++++++++++++++++



充「——ってわけでね、そっちに行った魂追い返してくれないかな。・・・・・・うん、それ。・・・・・・・・・・・・ありがとう。助かった、プルトン。じゃあ」

 街は3分で元通りになった。
 今時の神様って本当に何でもできるのか
 ・・・そもそもお前らが原因なんだからこれぐらいやって当然だけど。やってくれなきゃ困るけど

充「大地君。コレ、ありがとう。貸してくれて」

大「・・・まさか、携帯で冥界に連絡できるとは思ってなかったんですけど」

充「まあね。・・・どうして冥界にかけたって知ってるの?」

大「・・・・・・プルトンって、冥界の王ハデスの別名だろ」

 俺は気が抜けたのと、本気でどうでもいい会話に溜め息をついた
 全く。神話ヲタクをなめんじゃねーよ。

美「じ、ジュー、だいちぃ・・・ごめんな、さい、ひくっ・・・ずずっ・・・」

 やっと落ち着いたばかりの美衣名がぐしゃぐしゃの顔で言ってきた
 せっかくの美人が台無し・・・に、ならないのは、流石、美の女神としか言いようがない

大「分かったよ。だからもう泣くな」

 剣を手放して大人しくなった真亜豆の袖を握り締めたまま、美衣名はぽたぽたと涙を零しながら頷いた

真「ほら、美衣名。袖じゃなくてこれで拭け。誰もお前を責めてないだろ?」

 真亜豆は綺麗に畳まれたハンカチを渡し、彼女の頭を軽く撫でる
 彼の赤い服の色が微妙に変わっているのは、美衣名が涙を拭いたせいだろう

美「で、でも・・・っ、私・・・」

真「大丈夫だ。後は充に任せればいい。心配いらねぇって。オレが保証してやるから。ココアでも飲んで、少し落ち着こう」

 美衣名は泣き腫らした目を伏せたまま、静かに頷いた

大「・・・いいヤツだな。真亜豆」

商「当たり前じゃないかな。だって真亜豆、美衣名のこと好きだし」

 それでなくてもイケメンな性格だ。顔もいいし、少し(かなり)ズルイ
 勝手にキッチンでココアを淹れる真亜豆を見ながら、俺はどこか複雑な気分に陥ったのだった


+++++++++++++++++++++++++


 街も部屋もすっかり元通りになった。
 だが、

大「・・・お前らいつまで居座る気だ」

 問題の神様達は思い思いの場所でくつろいでいた
 美衣名が落ち着くまでかと思っていたが、一向に帰る気配が無い

充「だから、僕らは天界には帰らないよ?結局、さっきの殴り合いじゃ決着つかなかったし」

羽「私もこのスカした男をどうにかするまでは帰れんな。さっさと1番の座を返してもらわないと」

商「っていうか、君も審判じゃないの?僕達の順序を決めるのは君なんだけど」

大「・・・マジで消えてくれ・・・」

 ヒビの入ったガラステーブルに突っ伏したところで、真亜豆がココアを持ってきた
 美衣名がおかわりを求めたので、ついでに俺たちの分も淹れたようだ
 ・・・つくづくデキたヤツだな・・・

真「ところで充。オレたちの住まいはどうなったんだ?しばらく地球にいるんだろ?」

 ん?と充は淹れたてのココアをすすりながら考えをめぐらせる
 その瞬間、俺は何故か嫌な予感がした
 そう、今年最大の不幸がやってくるような、そんな気分だ
 充はココアのカップをテーブルに置くと、ガニメデを手招きで呼び寄せる

充「あのさ、家のほう、どうなった?」

ガ「マスター、アテがあるって言ってましたから僕は何もしてませんよ?」

充「あ、そうだっけ?」

 ちらり、と充は俺の顔を見る
 ヤバイ、今の目配せは絶対にヤバイ!

充「んー・・・。じゃあさ、














              ここに住んじゃえ。」





大「言うと思った・・・っ!!!!」

 にー、と充の顔が歪む
 くっそ、絶対住む場所考えてなかったんだ・・・!!

大「てめぇ、神様ならちゃんとしろよ!」

充「ヤダ。」




 そして、俺の家に、7人の神様が住むことになったのです