コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 泣き虫ヴィーナス!−兄弟喧嘩は他所でやれ!!−キャラ募集中! ( No.23 )
- 日時: 2013/01/20 03:48
- 名前: 粉雪百合 (ID: wAE.Fy2c)
ドアを開けると、男子寮では絶対ありえない人物——つまり女子が2人立っていた
特に右の奴。大きく見積もって中学生がいいところだ
俺はその2つの顔をしばらく眺めた後、
バタン
何も言わずに戸を閉めた
?「ちょ、ちょっと、大ちゃん!?何も閉めること無いでしょ!?」
ドアの向こうから焦ったような声が聞こえてくる
大「カン!お前を呼んだ覚えはねぇぞ!!」
ドアノブを握ったまま黒い板に向かって叫ぶ
ガチャガチャと向こう側でノブを回す音がしばらく続いたが、不意にピタリと止んだ
?「大ちゃん、いいの?僕のペットがそっちに迷い込んでも!」
大「俺を殺す気か・・・っ!?」
バッッ!!と可能な限りの最大速度でドアを開くと、その勢いのまま左の奴の頭を握る
?「痛いよ、大ちゃん」
端麗な顔が、にこりと笑みの形を作っていた
充「大地くーん?何やってるのー?」
そこにひょっこり奴が現れた
お前・・・っ!?何で出て来るんだよ・・・!!
?「誰?大ちゃんの友達?」
?「え・・・!?大地に俺達以外の友達なんかいたのか!?」
大「渚、ものすごい失礼だって分かって言ってるんだよな?」
右の不良風少女にガンを飛ばす俺を無視して、充は暢気に言い放った
充「僕のことは無視してくれて良いから、入って入って」
いや、ここ俺の部屋なんですけどね?
+++++++++++++++++++++++++
官「はじめまして、充さん。大ちゃんがお世話になってます。506号室の陸奥官(むつつかさ)です。『官僚』の『官』って書いて『つかさ』と読みます」
ぺこりと頭を下げたのは、この階の端に住んでいる俺の友人、通称カンだ
くりくりした丸い目に華奢な体つき。女子と違わないその可愛らしさとは裏腹に、蛇や蜘蛛などをペットに飼っているトンデモ野郎だ
まめな性格ではあるのだが・・・下手に頭がいいので次の行動が読めない
充「はじめまして。こちらこそ、大ちゃん(笑)がお世話になってます」
とりあえず充の足を踏んでおこう
渚「どうも。伊佐渚(いさなぎさ)です。どーぞよろしく。隣の赤星寮の1階に住んでます」
こっちは俺のクラスメイトで同じく神話学を選択している少年だ。背が低いし童顔だしで、よく女子や中学生に間違われている
長い黒髪に白のピアス。背中には手作りの愛刀。今でこそ普段着だが、基本は学ランで過ごしている。ちなみに口に咥えているのはチョコレート。タバコじゃないのであしからず
性格は・・・こんな不良みたいな格好だが真面目そのものである。多分
渚「それにしても地元に友達がいたなんて・・・。ボッチだから寮生活してるんじゃなかったのか」
大「うるせーな。家が遠かったんだよ」
こうやって俺をいじってこなければ、コイツは真面目だって言い切れるのだが・・・
官「あれ?大ちゃん、このぬいぐるみどうしたの?」
ヤバイ。なんか早速気づかれた!?
充「あ、それ僕のだよ。手作りしたんだ。可愛いでしょ?」
官「へぇ!すごい!今度僕にも作ってよ」
あ、案外大丈夫だった
真面目に充が役割を演じてくれて助かった。信用してなかったわけじゃないけど
渚「早速始めようぜ。パソコン借りるぞ」
大「おう」
この調子でいってくれることを信じてレポートのほうに集中しよう
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その後はなんとか何事も無くレポートを進行させることができた
そろそろお昼にするか、という時間帯になった頃、再びチャイムが鳴った
大「・・・今日はやけに客が多いな・・・」
ガチャリ、とドアを開くと、立っていたのはまたしても2人組だった
大「・・・おーい、カン。迎えが来たぞー」
?「おいおい、ダイチ。来て早々俺らごとカンを追い出そうとするな。また来てるのか」
?「昼メシ作りすぎたから食うの手伝ってくれ」
背の高い友人の手には、1人暮らしじゃ滅多につかわない大鍋があった
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?「へぇ、お前、地元に友達いたのか」
官「ねー、思うでしょー?」
大「・・・カン、政重、今すぐ靴を履け」
官「えぇ!?ごはんすら食べさせてくれないの!?」
ガラステーブルに胡坐という青星寮スタイルでそんな雑談が繰り広げられる
官の隣に座ったのは、隣に住んでいる双羽政重(ふたばまさしげ)。どこにでもいる一般的な高校生だ。バカだけど
ただ、いつも学生カバンを持ち歩く、変な奴でもある
?「充くんの食器、あってよかったな」
異様な存在感のある鍋からカレーをよそう長身(といっても星度を見た後なのでだいぶ小さく見える)の彼は真下にあたる401号室の住人である
名前は一橋辰民(ひとつばしたつみ)。一言で言うと「何事にも頑張り過ぎる奴」といったところか。眼鏡に黒髪と学級委員長風の出で立ちではあるが、何をどう空回りしているのか、なかなか上手くいかない不器用な奴である。その一方で、スリの常習犯で手先が器用な節がある
ちなみに、官・政重・辰民とは去年クラスが同じだったのだが、その頃のカオスな状況といったら・・・渚がいたら突っ込みすぎて喉を枯らしていたかもしれない
官「ねぇ、たっつー。これもしかしてスパイスから作ったの?」
辰「まさか。カレー粉からだよ」
持参したらしき器に盛られた香ばしい刺激臭のするそれを口に運んで目を輝かせている官
今時カレー粉とは・・・相変わらず変な所を凝る奴だ
渚「ただいまーって、アカーン!!もう食べ始めてる・・・っ!!」
自分の部屋まで皿を取りに戻っていた渚が、この光景に思わず玄関で叫んだ
男子の1人暮らしなんてもの、食器が1セットそろっていれば良いほうである
こういう時は、それぞれ自分の部屋から食器を持ってくるのが常識である
少なくとも狭いこの寮ではこれが普通の光景なのである
いくら、今、俺の部屋には神様達が使っていた食器が大量にあるとはいえ、まさか、それを出すわけにはいかない。いやー、渚おつかれ
充の食器は政重がカバンから取り出したものである
予備の食器を持ち歩くなんて・・・ホントに政重のカバンには何が入っているのか分からない
「困ったときの政重のカバン」とは俺達が良く勝手に言ったものだが、流石に木彫りの熊の置物が出てきたときはビビった。ドラ●もんの四次元ポケ●トか。
政「いつもは紙皿置いてるじゃねぇか。どうしたんだ」
大「たまたま切らしてたんだよ。お前らもここで食うのが当たり前みたいになってるけど、いい加減自分の部屋で食ったらどうだ」
官「でも、大ちゃんの部屋、角地だから政重のとこよりかちょっと広いし・・・一番モノが少ないしね」
確かに、官の部屋は危険生物のゲージで埋まっているし、政重の部屋は足の踏み場が無い。辰民の部屋は・・・なぜあんなことになるのだろうか。渚はこの寮じゃないから論外か
充「うん、ここになるのも頷けるね」
大「お前が言うか」
状況を知らない奴が言える台詞じゃないだろ
ついでに言っておけば、紙皿がなくなったのはお前らのせいなんだぞ
辰「なぁ、大地。このカレー、ここに置いておいていいか?すぐにはなくなりそうに無いんだけど・・・」
渚「結局ここに食べに来るのか」
大「あー・・・いいよ」
渚「しかもいいのかよ!?」
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政「じゃあな、ダイチ。また明日、学校でな」
官「お邪魔しましたー」
辰「レポートの邪魔して悪かったな」
渚「むしろ予定より早く進んだ。助かったよ」
日の落ちる頃、夕飯(カレー)を食べ終えた連中が、自分の部屋に戻っていった
官「ねぇ、充さん。駅まで送ろうか?」
充「大丈夫、こっちに引っ越してきたから家もすぐそこだし」
官「あ、そう?」
じゃあね、と官は部屋に入っていった
最後の最後までひやりとさせやがって・・・
大「とにかく、何事も無くてよかった」
充「そうだね」
にこ、と充が隣で笑っていた
案外、ちゃんとした奴なんだな。と俺はコイツに対する考えを改めることにした
充「さて、早くあいつらを戻してやらないと。農土が美味しい物にありつけなかったって言って僕らを食っちまう」
大「ぬいぐるみになってもその機能は変わらねぇのかよ・・・」
はぁ、と俺は溜め息混じりにドアを閉める
何事も無い明日がやってくることを願いながら。