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Re: 泣き虫ヴィーナス!−兄弟喧嘩は他所でやれ!!− ( No.4 )
日時: 2012/11/29 22:19
名前: 粉雪百合 (ID: gJM7cnIU)

2話『ぬいぐるみと高校生!』



——おいおいおい何だあの女は!!

 俺は階段を駆け下りながら心の中で叫んだ

——あの金髪不良娘、神様とか言って5階から飛び降りやがった・・・!いかれてやがる!!

 ダァンッ!と5段飛ばしで飛び降りた衝撃で踊り場の床が音を立てて震える

大「・・・何も俺の前で自殺することねーだろ・・・!!」

 誰もいないことを確認すると、俺は自分の部屋の真下へと向かう
 幸い、今の時間は人通りも少ない
 騒ぎになる前に・・・

 ザッ、と最後の角を曲がった時、俺の思考は真っ白になった
 金色。
 金の髪を携えて、







 少女はそこに立っていた。







大「・・・・・・ぁ?」

 呆けて声すら出せなくなった俺に、美衣名は今にも泣き出しそうな顔で言った

美「ご、ごめんなさい、もう、勝手にお邪魔しませんから許してください・・・・・・っ」

大「は?」

美「あ、あの、部屋に入ったこと、怒って追って来たんじゃ・・・?」

大「違っ!?っていうかお前なんで生きてんだよ!5階から飛び降りたんだぞ!?」

美「ひっ、う、わ、私は神様だから・・・うぅ」

 しまった、泣き出しちゃった・・・

大「ご、ごめん。そんなつもりじゃ・・・」

 思わず謝るが美衣名の涙が止まる気配はない
 がさつな男どもに囲まれて生活している俺にとって、こんなケースはお目にかかることすら滅多になく、当然対処の仕方もわからない
 オロオロとその場に立ち尽くしていると、背後から聞きなれない声が降ってきた

?「どうして泣いているのかな、お嬢さん。」

 ひょこっと俺の肩の辺りからクマのぬいぐるみが現れた
 完全に裏声だろ、と言わんばかりの音に合わせてピコピコと揺れている

美「・・・?」

 美衣名がその声に顔を上げる
 そして固まる俺の肩越しに何を見たのか——輝かんばかりの表情になった

美「ジュー・・・!」

 ザリ、と砂を踏みしめる音と共に、ぬいぐるみと青年が俺を追い越した

青「美衣名、こんなところにいたんだね」

 170センチぐらいだろうか。高くも低くもなく、高校生ぐらいの若い優しげな男だった
 右手にクマのぬいぐるみを持ち、左肩には王子様っぽいぬいぐるみを乗せていた
 ただ、彼の着ていた服装は、到底現代の若者のそれとはかけ離れたもので、ちょうど古代ローマ人が纏うような、薄手の布一枚であった
 ジューと呼ばれた彼の言葉に、美衣名は再び泣き出す

青「あれ・・・!?美衣名!?」

 焦ったように彼は美衣名のもとに駆け寄る
 その彼の薄手の布にしがみついて、美衣名はますます激しく泣いた

美「ぐすっ、ジューの馬鹿!・・・ひくっ・・・心配した、っ!!」

 あー、と彼は気まずそうに笑うと、美衣名の頭を撫でた

青「悪い。こっちにみんなを送り届けるのに必死で来るの遅れちゃった。さっきみんなに俺の位置知らせたから、すぐに集まるよ」

 うんうんと美衣名はしがみついたまま首を縦に振る
 ええと、よくわからないがこの青年(?)も美衣名と同類の人間と認識して良さそうだ
 再開を喜んでいる今のうちに逃げるべきか。
 俺はこっそり2人から遠ざかっていく

青「ところで・・・」

 ふ、と青年がこちらを振り返る
 俺がぎくりとして足を止めると、青年はにこりと微笑んで見せた



青「君は何者かな?」