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Re: 泣き虫ヴィーナス!−兄弟喧嘩は他所でやれ!!− ( No.6 )
日時: 2012/12/16 02:47
名前: 粉雪百合 (ID: wAE.Fy2c)

3話『神様の事情!』



青「やー、ごめんごめん。そんな、まさかベランダに落としちゃってたなんて思いもしなかったよ」

 ガラステーブルを挟んで相対している青年は、そう言って頭を掻いた
 膝の上に乗せた人形が謎の存在感を放っている

美「酷いよ、ジュー。気付いたら誰もいないし・・・」

 まだぐずぐずと鼻をすすっている美少女は、ちゃっかり俺の横で自分の席をキープしていた

大「っていうかあんたら方、何を勝手に人ん家上がり込んで勝手に落ち着いてんだコラ」

 金髪と人形青年はそのひと言で初めて、この場に俺がいることに気付いたかのような顔をする

青「で、君だぁれ?」

大「この家の主の阿守阿大地です!さっきも名乗りました!!つーかお前こそ誰だよ!!」

充「充。」

 は?と俺が固まると、青年は柔和な微笑みを向けてきた

充「木蓮充(もくれんじゅう)。まぁ、昔の呼び方っていうか、この世界での僕を表す呼び名は”ジュピター”なんだけど」

大「え、ジュピターってギリシャ神話のゼウスと同じって言われてる、あの”ジュピター”?天界一の実力者だぞ?それが、お前?」

充「へぇ、くわしいね。そうだよ」

 呆然とする俺をよそに、充はこともなげに言ってのける
 彼はクマと王子のぬいぐるみを机の上に置きなおすと、ゆっくりと席を立つ

充「君が言ったとおり、僕は天界を統べる神だ。こうやって地球の人の姿になることもできる。それなのにね、僕ってばここに来るのに自分の服を用意し忘れちゃってさ、神様の衣装なわけ。笑えるよねー。みんな怪訝な目で見てくるし」

大「・・・当たり前だ。」

 その格好は正直言ってよく通報されなかったものだと思う

大「そもそも、そんな事言って、お前ら本当に神様なのか?普通の感覚を持った人間として言うが、俺はお前らが変人にしか見えない」

 えー、と充はやる気のない講義の声をあげる

充「じゃあさ、証人呼ぶから今から言う話、信じてくれる?」

大「証人・・・?」

 そうだよ。と、充はなぜか先ほど自分で置いた王子のぬいぐるみを手に取った

充「そーれっ」

 間の抜けた声で充はそのぬいぐるみを宙に放った
 刹那——
  どろん
 何とも忍者めかした擬音と共に、ぬいぐるみが人の姿へと形を変えた
 さらに、

王「酷いじゃないですか、マスター!僕の体、雑に扱いすぎですよ!!」

 銀の髪の少女——否、少年だろうか。王子だし。——は、くるりと身軽に着地すると、充を睨み付けた

充「紹介しよう。僕の3番目の遣い魔・・・じゃなくて神様なんだけど、なんていうのかな?遣い神?まぁ、何でもいいけど、ガニメデ君です」

ガ「だから粗いですって!!」

 それでも調子が変わるわけではなく、充は飄々と言った

充「ねぇ、ガニメデ君。僕たちのこと神様だって証言して欲しいんだけど・・・」

ガ「・・・僕じゃダメなんじゃないですか。マスター側の人間ですし、一番怪しいのは僕の存在ですよ」

 そうなの?と、充は俺に話を振ってくる。ダメだこりゃ。

大「・・・・・・もう、なんでもいいですから、話とやらをして下さい、神様?」

 こうなったらさっさと話を済ませてお引取り願おう
 俺はそう思って話を進めたのだが、瞬時に後悔することになる

充「これからちょっとこの辺で喧嘩始めるから、大地君、誰が勝ったか判断してくれない?」

大「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

 思わず目が点になる。どういうこと?

充「僕たち、今から誰が一番強いのか勝負しなきゃいけないんだ。で、君にその審判を頼みたいんだけど・・・」

大「・・・えっと・・・誰が、誰と、何の勝負をするんですか・・・?」

 とりあえず、聞いてみる

充「太陽系の神様たちが、誰が一番喧嘩が強いのか、実際に戦って決めるんだよ」

 ますます意味が分からない
 何のためにそんなことをしなければならないんだ?

大「・・・なんで?」

充「僕たち太陽系の神々って、天界じゃ7兄弟って呼ばれてるんだけど、実際の関係は親だったり祖父だったり甥っ子だったり、とにかくややこしくってさ。手っ取り早く強いもの順で長男、次男・・・って決めちゃわないって話になったんだ。そのほうが楽でしょ?」

 楽ってオイ。
 つまりアレか、そんなしょうもない議論に発展するほど他にする事無いんだな、神様

大「・・・そのために喧嘩?しかも地球で?」

充「他に中立の立場が無くってね。天界でやったら怒られそうだし」

大「いや、神様同士の喧嘩なんだから天界でやれよ!地球を巻き込むんじゃねぇ!!」

充「もう来ちゃったもん」

大「さっさと帰れぇぇぇええええ!!!」

 大地の絶叫は、充の微笑みに軽く受け流されたのだった