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Re: ドタバタ行進曲【B組編】着ぐるみ探偵スタート! ( No.249 )
日時: 2013/01/13 18:14
名前: さくら ◆G87qGs20TY (ID: KFMc8eJJ)

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被害者の部屋にマリー警部、海野刑事、そして西条さんに高橋さんが集まった。

「こんな時間に呼び集めるなんて、これだから庶民は……。はしたないですわよ」とマリー警部。
「まぁまぁ、警部」と海野刑事。
「もしかして、犯人が分かったんですか?」と西条さん。
「まさか……」と高橋さん。

私も耐えきれなくなって声を上げた。「誰が犯人か分かったっていうの?」

すると芽呂は口を開け、「そうだにゃ」と言った。


みんな、驚きを隠せない様に芽呂を見た。

「まず、容疑者から説明するお。被害者が亡くなったこの部屋、窓や玄関の鍵はしっかり閉まっていた状態……つまり、密室だった訳だったのら、そうでそ? 海野刑事?」

「はっ、はい! 確かに密室でした!」と海野刑事、少し緊張している様だ。私だってしている。芽呂の謎解きはいつも緊張するのだ。『犯人は誰か』とか、『どういうトリックを使ったのか?』とか。そういうのが気になってしょうがない。

「じゃあ、被害者を殺した後にこの部屋を簡単に密室に出来るのは、『合鍵』を持っている西条さんと高橋さんだけってゆーこと」
芽呂は西条さんと高橋さんを見る。その目はいつもの芽呂の目ではなかった。

「そ、そんな……」と西条さんの困った顔。
「合鍵だけで容疑者なんて……あんまりです」高橋さんは泣きそうな顔で言った。

するとマリー警部は「レディーなら人が話している途中で口を出さないはずですわ」と言ってのけた。「最後まで彼女の話を聞いて下さるかしら?」

西条さんと高橋さんは何か言いたげだったが、黙ってしまった。

「すると、容疑者は西条さんと高橋さんの二人になるのら。
……西条さんもしかしたら、にゃんにゃんに被害者の雪村さんの事について言ってない事があるんじゃないのら?」芽呂は西条さんの方を向いて話した。

「にゃんにゃん……?」西条さんは戸惑ったようにつぶやいた。『にゃんにゃん』って誰?って感じなのだろう。

「あ、すみません。私の事です」私は自主的に挙手して言う。

すると西条さんはビクッと体を震わせて芽呂を見た。
———そっかこの人、何か隠していたんだ。 

「じ、実は……。奈々絵ちゃん、ここ半年の家賃を払っていなかったの……。
200万円ほどかしら。でも何かあるのだろうと思って払ってくれるのを待っていたのよ。
————……ごめんなさい、この事を話さなくって。200万円ってかなりの大金でしょ?だから殺人の動機って疑われると思って……」

西条さんは少し肩をふるわせながら言った。

「いえ、でもこういう事言わないと『おバカさん』の集まりの警察には犯人だと勘違いされるから気をつけた方がいいお?」芽呂はいつもの様にアホらしく笑う。

その言葉に反応したのは、もちろんマリー警部だ。

「誰が『おバカさん』の集まりですって?! これだからお遊びで探偵ごっこなんてしてる庶民は困るのよ」

私は一瞬カチンときたが芽呂の冷静な態度をみて落ち着く事にした。どうやら無視する気らしい。
目の前では海野刑事がマリー警部をなだめる光景。


「じゃあ、高橋さん。これ、あなたが気にしてた被害者宛てにあなたが送った年賀状でそ?」芽呂はさっき見つけたばかりの『普通じゃない』年賀状をひらりと振って見せた。


すると、高橋さんは体を大きく震わせ、目を見開いた。
————……この年賀状に何かが隠されているのは分かったけど、一体何が……?


「ねぇ、この年賀状のどこが『普通じゃない』って言うのよ? どこからどう見ても普通の年賀状じゃない」私はたまらず口を開いた。

私の質問に芽呂はしばらく私をにらんだが、「ま、いっか」とつぶやくと、私にその年賀状を手渡した。

私は年賀状を受け取って、まじまじと見つめる。
『明けましておめでとう』の文字、へびの絵……どこもかも普通だ。

すると芽呂は顔をしかめて「どっち見てるの、にゃんにゃん? こっちだおー」、そして私の持っているハガキをひっくり返す。

————……宛名の面が普通じゃないってこと……?!


私はハガキへと目を向けた。
『雪村奈々絵様』『高橋葵より』……切手はなし(年賀ハガキだから)、
お年玉宝くじ———777777。

————……?!
これって……?!

私は芽呂へと目を向ける。

「やっと気づいたのら。……そう、このハガキは『お年玉宝くじ』の一等ハガキなのら」

私はふと先日のTVの事を思い出した。
毎年恒例、『お年玉宝くじ』の一等ナンバーが777777だという事を。
これを見て、芽呂は「今年のは覚えやすいにゃ」とか言って届いた年賀状のナンバーを見ていた気がする。それに今年の一等賞には確か5000万円が与えられるとかでニュースでも大々的に取り上げられていた。


「きっと高橋さんが被害者に向けて送った年賀ハガキが一等くじだという事を知って高橋さんは気が動転したんだろーね」芽呂は言う。

高橋さんを見ると、下を向いて震えているのが分かった。


「そりゃー賞金は5000万円だもんね。んで、高橋さん、あなたは被害者に事情を話して少し賞金を分けてもらおうと考えた。でも結局断られたから殺害して、ハガキを持ち逃げようとした……。けどハガキを見つける事は出来かった、あってますかにゃ?」芽呂は高橋さんも見て尋ねた。

高橋さんは相変わらず下を向いていたが、素直にうなずいた。



「……っでも、証拠がないですよ?」さっきまで耳を傾けた海野刑事が声を上げた。

「証拠はあるお」芽呂は冷静に答える。そして「にゃんにゃん、そこにあるゴミ箱取ってー」と言ってきた。
私は素直にゴミ箱も手渡す、————確かに中身は丸まったティッシュにみかんの皮、そしてぐちゃぐちゃに丸まったセロハンテープ。

「凶器とされた包丁には、被害者の指紋しかなかったんだよね、海野刑事?」芽呂は海野刑事に尋ねた。

「え、あ、はい。しかも、ここ周辺も探しましたけど手袋の様な物もありませんでした」
「んじゃ、手袋以外の方法で高橋さんは指紋を隠した……、何だと思う? にゃんにゃん」

私は考えたが、何も思いつかなかった。
「え……っと、分かんない……」

「もぉ……。テープだよ、テープ」芽呂がゴミ箱で丸まったセロハンテープをハンカチでそっと、つまみ上げた。

「マリー警部、もしあなたの鑑識さんに頼んでこのテープ調べて頂ければ、高橋さんが犯人である証拠を得る事が出来ますお」芽呂が言う。


「どういうことですの?」とマリー警部、

「このテープを、指に怪我をした時に絆創膏を貼るように『指にテープを貼る』のら。ほら、こうやって五本の指にね」

芽呂は自分をおおうように、くるりとテープを巻き付けた。そしてそれをすべての指に。


「そしたら、ほら。指紋は隠れちゃうのら」


おぉ、とみんなの声が上がる。————……もちろん私も。


「でもね、高橋さん。このテープにはあなたの指紋と被害者の血が付いた証のルミノール反応(分からない子は調べてみよう)が出てくるはずなのら」

高橋さんは涙を流しながら頷いた。





事件、解決。芽呂は静かに窓の外を見た。
綺麗なオレンジ色の空、そろそろお腹が空いたとでも芽呂は思っているのだろう。