コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ドタバタ行進曲【B組編】顔ぼしゅーさん、開催中! ( No.343 )
日時: 2013/01/24 16:07
名前: さくら ◆G87qGs20TY (ID: Gg/cy2.F)

六話目


お湯沸かしのケトルがぐつぐつと震える。湯気が部屋に立ちこもっているせいか、少し暑く感じる。

———……隣の、ゲーム組の熱気も暑い。ラスボスと戦っているのか、『うわぁ』とか『いっけぇー!!』とか言った声が聞こえる。


するとケトルが沸騰を伝える音がした———『カチっ』

私は黙って、お湯を鍋に注いで鍋にふたをするような形でボウルを乗せた。
瑠璃愛も黙って刻んだ30枚分のチョコをボウルに入れる。


少しずつ溶けていくチョコを見ていると、本命チョコの事が頭に浮かんだ。


私って、好きな人居るの?
——……YES、湯斗と一緒に居るのは楽しいし湯斗が好き。
それに、湯斗は私と海野君以外の唯一の『クレアハンター』。

じゃあ、チョコをあげて告白するべき?
——……どっちだろう。分かんないなぁ。


頭の中で、『私』と自問自答する。ふと、チョコをかき回していた手を止めて隣の瑠璃愛を見る。さっきまで、結構キッチンに群がっていた人たちもゲ−ム組に混じって観戦中。

いつの間にか、キッチンには私と瑠璃愛だけとなっていたのだ。



「ねぇ、瑠璃愛」
私が声を出す。

「ん、何?」
瑠璃愛はこっちを見て、素っ気ない返事をした。

「瑠璃愛はチョコ、誰にあげるの?」

「そうね、……そう言えば決めてなかった」

「え、そうなの?」

「うん、私は別に友チョコとかは贈らない方だし」


———……そうかも、瑠璃愛はどこか真面目なところがあって
『友チョコをあげない=友達じゃない』っていう女の子の法則? みたいな物は気にしなさそう。

「優は?」

瑠璃愛は私の事を『優』と、本名で呼ぶ。そんなところも、真面目なんだなぁと思わせる。

「私は……迷ってる」

「なんで?」

「えっとー……その、好きな人にあげるべきか迷ってる」


私は、瑠璃愛だったら正直に言える事がある。
今回もどうやらそんな感じなのかもしれない。

瑠璃愛は私を真剣に覗き込んで、一息ついた。

「湯斗でしょ?」
瑠璃愛は少しいたずらっぽく笑う。

私は頷いて、恥ずかしくなって、うつむいた。


「あげれば? 告白じゃなくても、あげる事に意味があるかもしれないし」

チョコの入ったボウルを鍋から取り外して、「こんなもんか」と瑠璃愛がつぶやく。


私はただ「うん」と言う事しか出来なくて、鍋に残ったお湯をシンクに流した。






「ブブッ、聞いちゃったよ」



声がする、見なくても分かる。———……KY少女、未来の声だ。

振り返ると、B組の女子全員がキッチンを覗き込んでいて、
『あーぁ、バレちゃった』と言うかの様に苦笑いした。


「にゃんにゃん、頑張って!!」
「頑張れ———!!!!」
「え、にゃんにゃんって湯斗の事が好きだったの?」
「凄いね、にゃんにゃん」
「ユーちゃんには私が居るじゃない……」
「まぁまぁ」


皆が好き勝手に喋るのを黙って聞く。



それでもついに堪忍袋の緒が切れて、私は叫んだ。

『うるさいっっ!!』


————……死ぬほど恥ずかしかったのは、内緒だけどね。