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- Re: ドタバタ行進曲【B組編】顔ぼしゅーさん、開催中! ( No.356 )
- 日時: 2013/01/25 15:35
- 名前: さくら ◆G87qGs20TY (ID: Gg/cy2.F)
七話目
ついに当日、バレンタイン。
昨日の放課後はどれだけ大変だったか……。
B組女子が私の本命チョコについて騒ぎだした後、私たちはチョコを型に流し込んだり、色々と工夫して完成させた。
私はレシピ本とにらめっこする事30分、チョコマフィンを作った。マフィンの上には、ニコニコマークを付けたかなりの力作。
『湯斗、甘いのが苦手だったっけ?』
とか思って、ダークチョコを使った。くるみとか、ナッツとか入ってるけど好きかなぁ?
朝から私は落ち着かなくて、ラッピングしたチョコをチラチラと見ては
『悪くならないかな?』とか『デコレーション、崩れないかな?』とか考えた。
そろそろ家を出なくてはいけない。学校までの電車を一本遅れてしまう事になる。
私は、鏡を覗き込んだ。
いつもはポニーテールだけど、今日は髪をおろしてみた。
もともと、少し毛先に癖がついているのでカールしたように見える。
———……前髪も……よし。
家を出て、駅に向かう。
頭の中は色んな事がたまってパンクしそうだった。
*
「にゃんにゃん、頑張っておー」
学校に着いた時、下駄箱で会った芽呂に声をかけられた。
———……今日はちょっぱーの着ぐるみ。ピンクのシルクハット(?)が何となく可愛く見える。
教室に着くと、早くもバレンタインモード。
男子はそわそわ、女子はどきどき。
——……小学生か、お前らは! って突っ込みたくなったけど、私も同じだから言わなかった。
「今年、もらえへんかったら俺まじで泣くで?」
ヤツバが男子の中心となって喋っている。冗談のように話しているが、よっぽどもらいたいのだろう。目が泣きそうな様にも見える。
「青春としては欲しいよなー」
龍も、ゴーグルの奥の目を光らせながら『青春』というワードをつかう。
その言葉に過剰に反応する弥生。———……弥生は龍にチョコをあげるって言ってたっけ? 告白とかするのかなぁ。
秋人と未来のカップルはさっきから、チョコを渡しては「ありが十匹」とか言って独自の騒がしさを保っていた。
(周りは結構寒くなってたけど、今日は許すって事にしとこう)
お昼休み、ついにほとんどの子がチョコを渡す事を決意した。
(この時点で、もうチョコを渡していたのは友チョコ派のゆりかんと有栖のみ)
まずは極度のツンデレを発揮するであろう、弥生が告白するみたいだ。
———……いつもポーカーフェイス(でもないか)な弥生の顔は緊張しているようにも見え、体は小刻みに震えていた。
それでも、意を決したのかすくっと立ち上がり教室を出て行った。
さっきから龍の姿がないから、どこかにでも呼び出したのだろう。
———……どこに呼び出したかは知らない。それに知らなくてもいいと思う。
きっと、帰ってくる時の弥生と龍はお互い照れ笑いをしていると思うから。
その次は、遥華だ。遥華は石川先生(侍口調の英語教師)が好きだと言っていた。
さすがに、『恋愛関係』にはなれないと本人も分かっていたらしくチョコだけ渡す事にしたらしい。
いつも手には水晶玉がある遥華が、チョコを入れている可愛い紙袋を持っているのは珍しい光景があった。
きっと遥華にも幸せな未来が待っている、そう願いたい。
だって私、聞いたんだよね。石川先生に『好みのタイプは?』って聞いた時に
「このクラスだったら、鶴崎殿じゃな。拙者、大人っぽくて静かな女性を好むのだ」
って言ってたもん。別に、『遥華が好き』とは言ってないけど遥華だって大人になる。
……幸せになるのはそれからでも良いんじゃないかな?
教室には数人の男子が居た。
琥珀に田中(真面目なやつ)、その他もろもろ。
琥珀と田中はどうやら、違うクラスの子からチョコをもらったらしい。
琥珀はマジック同好会の女の子から、
田中は妹の友達からの(義理)チョコ。
二人ともにっこにこ。だって『もらえなかった組』からの脱出が成功したんだもんね。
でも、それを見て郁実は顔を曇らせた。
———……そっか、郁実は琥珀に本命チョコをあげるんだっけ。
そりゃ、他の女の子からチョコもらってニコニコしている彼の顔なんか見たくないよね。
私は郁実に、「大丈夫だよ、頑張って!」と声をかけた。
すると郁実はうつむいたまま、みーちゃん(うさぎ)&クーちゃん(くま)を私の方に向けて、
「<ありがと、にゃんにゃん>」
「<にゃんにゃんって意外と優しいね>」
と腹話術で喋った。———……『意外』は余計だよッ。
そう思いながら、郁実の和服の柄を眺めた。
淡いピンクに梅の花、今の季節は梅は咲いてるのかな?
色は小さな女の子みたいだけど、その中でも自立している様な、そんな感じがした。
時計が1時15分をさす。
私の番だ。20分に湯斗を上の階の空き教室に呼び出している。
胸の奥から、心臓が飛び出しそうになった。