コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ドタバタ行進曲【B組編】B組キャラのイラスト募集中! ( No.420 )
- 日時: 2013/02/12 20:28
- 名前: さくら ◆G87qGs20TY (ID: Mt9DoeXY)
- 参照: http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sakura0919/
<1>
眠い目をこすりながら、手の中で温かさが広がる缶コーヒーを口にした。
———……やっぱりノンシュガーは苦いなぁ、心の中で毒突く。
あえて口にしなかったのは隣で芽呂がココアをおいしそうにすすっていたからだ。
芽呂越しに見える朝日が山で見え隠れして眩しい。
時刻は6時30分、電車に乗っているためか余計に眠く感じた。
計算すると、昨日の夜11時から電車に乗っている訳で。
なぜ7時間以上電車に乗っているかというと、昨日の夕飯時までさかのぼる事になる。
いつものように、ご飯を食べに来た芽呂は茶色い封筒を手にしていた。
『それ』を私に差し出す。
「なに、これ?」と私が聞くと、「とにかく読むのにゃ」と返って来た。芽呂はもう海老フライに手をつけていたので、大人しく封筒の中身を出した。封がもともと開いていたのは芽呂が先に読んだからであろう。
送り主の名前は……ない。
中にはこんな事が書いてあった。
『拝啓
吉田芽呂 様 川崎優 様
初めまして、小学6年生の中岡結衣菜と申します。
突然のお手紙で申し訳ありません。
実は先週、不可解な出来事が起きたので、お手紙を出させて頂きました。
私の友達の橘陽菜が突然消目の前で消えたんです。
——……まるで神隠しのようでした。
周りの大人達は信じてくれませんでしたが、確かに私は見たんです。
どうか、陽菜を探してくれないでしょうか。お返事、お待ちしております。
中岡結衣菜より』
手紙の端には、送り主のものであろう、電話番号が示されていた。
私は手紙を机に起き、席に座るとお茶を一口だけ口にした。
「神隠し? そんなのある訳ないじゃない」
私は海老フライに箸を突き立てながら言った。
「……」
芽呂は黙ったままだ。
少しの沈黙の後、芽呂は席を立った。
山盛りだった芽呂のお茶碗の中は、空になっていた。
「とにかく行ってみるのら」
くまのぷーさんの着ぐるみがヒラリと揺れた。
こうして私たちは中岡さんのいる、佐賀県浜町へ向かう事になったのだ。
いつの間にか芽呂は、ココアを飲み干し外を眺めていた。
私の手ではすっかり冷えきったコーヒーが怪しく光る。
腕時計の数字は知らぬ間に7時を示していた。