コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ミカエル図書館の館長は中二病でした。 ( No.5 )
日時: 2012/12/11 20:34
名前: 香里ー奈 (ID: k8mjuVMN)

「っていうのが私と拓磨の出会い」
「おいちょっと待てぇぇぇ!!あのままでよくね!?あのまま俺目線でいったほうがよくね!?」
「いちいちうるさい。あのままだったら主導権お前に握られるだろうが。
主要人物紹介のところ見てみろ。私の名前がいちばんにあがってるだろ?」

瑠佐奈は無理矢理小説の主導権を自らにうつした。

あの日出会ってから瑠佐奈と拓磨は親しくなった。
瑠佐奈は言葉が乱暴になってきたし、拓磨はツッコミが上手くなったし。

すべていいこと、というまではいかないが親しくなったので万事解決というやつである。日本語があっているか確かめたい。

「じゃ、拓磨はこのフィルムかけたら次はこの本ホラー系小説のところに置いてきて」
「ほいよ」

拓磨もこの仕事に慣れてきているようだ。
瑠佐奈はそれが嬉しくてたまらなかった。今まではすべて自分が行ってきたことを他の人と一緒にやるなんてどれだけ嬉しいことだろう。

午前中の仕事は大体終わった。というか、終わるはずである。
なんといっても客があまり来ないから。
客は来るがそれっきり来ない、というのが正解だろうか。
とりあえず暇である。

「あー、暇だね」
「そうだな。瑠佐奈、もうちょっと一般募集の小説の上限、上げたらどうだ?俺の友達にも出たいとか言ってたやついたぞ」
「そっか、じゃあ考えてみる」

返事をして、昼ごはんを食べるために図書館の裏にある母屋に戻った。
母屋と言ってもキッチンとテレビと風呂、トイレ。あと寝床しかないという簡素なものだが。
作り置きしておいたサンドイッチがあったことを思い出し、冷蔵庫の中を物色し始める。冷蔵庫の中はぐちゃぐちゃなので手探りをしないと探しにくいのだ。

「えーと……サンドイッチ……あった!!」

ぱさっとした感触が指に伝わって、それを一気に引っこ抜く。
少し野菜の水分を吸ってしまっているがおいしいはずだ。食べれるくらいの味は残っているはず。
その時だった。
母屋の外に気配を感じた。

「……ッ…はぁ…」

気配の犯人がわかり溜息を吐いた。安堵感もある。
扉を開け放つとそこには見慣れた姿があった。

「お兄……ノックしてよ」
「ごめんごめん。それよりも今週の分」

瑠佐奈の兄、裕太だ。今日は土曜日。小説家である裕太から新書を入荷する日だった。
そういえば拓磨はまだ一度も裕太の姿を見たことなかった。

「そうだお兄。ちょっと来て」
「あ〜?俺今すぐ帰りたい」
「いいから来てよ。紹介したい人がいるの」

兄を促しながら図書館に向かう。サンドイッチはあとで持ってこよう。




「は〜い、拓磨さ〜ん。紹介したい人がいるのでちょっと外出てきてもらってよろしいでしょうか〜?」

ドアノブをまわす音が聞こえてドアが当たらないように一歩後ずさる。
案の定、拓磨の顔が出てきた。
しかし、裕太に姿が目に留まった時に拓磨の顔つきは険しくなった。

「誰だよ、その人」
「この人?私の兄貴、柊裕太!」

拓磨は心底驚いたようだった。それはそうだ。瑠佐奈は兄がいることを拓磨に話したことがなかった。

「て、る、瑠佐奈さんの、お、お兄様でございますか!!これはとんだご無礼を!!お詫びの今日の俺の昼食、4分の1あげますので!!」

何時代のお詫びだろうか。というか噛みまくっている。
人見知りなのだろうか。外見の割にかわいい性格だ。それとも———

瑠佐奈はその考えを打ち消した。

「あ…どうも。瑠佐奈の兄の裕太です」

やはりこちらも人見知りだ。拓磨よりはすらすらと話せているが口数が少ない。すぐにぎこちない空気にまてしまった。
2人にまかせたら窒息死してしまいそうだ。

「ま、2人とも一緒にランチしようよ。裕太もまだ食べてないでしょ?」

この提案がのちに、この場よりもぎこちなくなってしまうのを瑠佐奈はまだ知らなかった。