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第三話 年末study ( No.19 )
日時: 2013/01/16 19:23
名前: 雪達磨 ◆1x97e8uwoc (ID: TtFtbd5q)

「なあ、年末だっていうのに何やってるんだろうな俺達」
「君のためだろ」
「いやそうなんだけど」

目の前にあるものが暗号にしか見えない。なんだろうこれは。



第三話 年末study



事の発端は冬休み前の期末テスト。帰ってきたテストのあまりの数字に、らしくもなくため息をついていた時。

「ハゲテストどうだったんだお!」
恐らく点数が悪いことを知っているのだろう莉緒が、目を輝かせて聞いてきた。

「……莉緒は?」
「五教科合計325点! 平均点のちょっと上だおー!」
「はは、いいな才色兼備の莉緒さんは」
「それで、何点なんだお」

にやにやしながら、顔を覗き込んでくる。違う方向へ目を向けてみても、その位置へわざわざ移動して顔を覗き込むその姿は、正に残念美人の称号に相応しい。

「見ればいいだろー」
ほれ、と各教科の点数と合計点数の書かれた紙を渡し、次に聞こえてくるであろう含み笑いを聞かないために耳を塞いだ。

「五教科合計点がよ、よんじゅっ……っ、さ……、ぷはっ、流石ハゲだぬ……、っく」
こうなると寧ろ盛大に笑ってもらえた方が良いのだが。

「そういえばハゲは勉強できなかったか」
読書していた手を休め、そう聞いてきたのは瑠璃。クラスが違うためかあまり知らないらしい。

「瑠璃見てこれ……っ、やばいお!」

「ふむ? ……これが人間の出せる数値だと言うのか」
「瑠璃さん深刻な顔やめてください。病死することが決定した末期患者を見るような目やめてください」

馬鹿にしているわけではなく、素で驚いているらしい。そこが傷つくわけだが。

「いやその、……あれだ。世の中にはこういう人も存在しているというわけだな」
「変なフォローやめてください」
本当にテストという物は嫌いだ。学校ではクラスメイトに馬鹿にされ、いじられるし。先生には、留年するかもしれないと忠告を受けたし、れん毛にきても勿論馬鹿にされっぱなしだ。

「お前はどうだったんだよ」
「え、は、私か? えーとだな、見ても面白い物ではないぞ」
「……ほーう?」
この慌て様は、相当悪かったのか。もしかすると自分より下がいるかもしれない。

「はい、瑠璃のとーった。読み上げるおー!」
「ちょ、莉緒!?」

「五教科合計492点。学年順位2位。……相変わらずつまんない点数だおね。瑠璃」
「読み上げといてなんだ君は!」
「…………」
順位が高かったことを恥じていただけだったようだ。

「ハゲの順位なんか、きっと下から数えた方が早いおー」
「どうしよー。このままいくと俺、留年らしい。勉強教えろ莉緒」
「ふは。そのほうが面白いからいいお」

「……ふむ」

瑠璃は少し考える素振りを見せてから、綺羅にこう提案する。

「……勉強会でもするか?」
「へ? 教えてくれんの?」
「まあ、私なら構わない。時間もあるのでな。……他は知らないが」
言い切るか言い切らないかのところで、莉緒がすぐに目を輝かせて言う。

「面白そうー! 参加するお!」
「お前さっき勉強教えろって言った時、拒否しなかったか」
「教えるのを見るだけなら別。面白そうだぬ!」

そう言う莉緒に悪い予感しかしなかったが、斯くしてれん毛同盟勉強会が始まった。