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Re: 浅葱の夢見し ( No.103 )
日時: 2013/04/06 21:26
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*ヒュンッ

鋭い風切り音が聞こえた。

「・・・シキ様。

 その巫女から、お手をお放しください」

「・・・ふ」

シキが唇の端を歪めて笑った。

彼の首には冷たく輝く刀の刃がつきつけられていた。

その刀を殺気を込めて握っているのは、レイヤだ。

「貴様は、ここの忍びか?」

「・・・そこの巫女の護衛を任された者でございます」

「では、言っておこう。

 おれは、この巫女が気に入った。

 ・・・ぜひとも、わが屋敷に連れ帰りたい」

レイヤの瞳が険悪に細められ、刀がチャキッっと音を立てた。

「・・・それは、護衛として黙って見ているわけにはまいりません」

「忍びごときがこのおれに刃を向けるか?

 この第三皇子たるこのおれに?」

刀をつきつけられているというのに、シキは余裕の表情を崩さない。

一方、カエデはめまぐるしく起こる出来事になかなかついていけなかったが、

シキの言葉に目を丸くした。

「お、おーじ?」

「本当に知らなかったようだな」

「うそ!」

「・・・残念ながら真だ。

 この方は、この国の第三皇子、紫綺様」

どこかうんざりしたようにレイヤはつぶやいた。

呆然とシキの顔を見上げた。

(こんなだるそうな男が第三皇子!?)