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Re: 浅葱の夢見し ( No.114 )
日時: 2013/04/10 10:03
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*「ねえ」

「・・・なんだ」

相変わらずそっぽを向いている男。

それでも、いつだってカエデの言葉を聞いてくれる。

「無事に、帰ってきて」

忍びは常に命をかけるような任務ばかりだ。

いつ死んでもおかしくない。

ただ、純粋に生きていてほしいと思った。

敵であるはずなのに。

ハルナを連れて行こうとした悪人のはずなのに。

目を見開いたまま動きを止めた彼の姿を見て、カエデの頬に一気に熱が集まった。

「い、いや、べべべべっべつにヒタギのこと心配してるとかそういうのじゃなくて、

 ほ、ほら、あなたがいないと困る人が四鬼ノ宮にはたくさん———」

「ありがとう」

青い瞳。

吸い込まれてしまいそうなほど深い、真しかうつさぬ色。

その言ノ葉に心が揺れた。

照れくさくなって目をそらそうとするのに、何故か目が離せない。

だが、彼はそれ以上何も言わず、もとのように食事を続けた。

彼を取り巻くとげのある空気はもうない。

カエデの一言二言で簡単に機嫌が直ったらしい。

やはりよくわからない人だと首をかしげながらカエデは夕餉を終えたのだった。