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Re: 浅葱の夢見し ( No.115 )
日時: 2013/04/10 13:04
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*不意に肌寒さをおぼえてカエデはゆっくりと目を覚ました。

隣で寝ていたはずの青年の姿はない。

行ってしまったのか、とぼんやり思った。

空は夜明けを迎えたばかりなのだろう。

障子からさす光はまだ淡い。

ふと、視線を感じた。

目だけでそちらを見れば、見覚えのある青年が柱に腕を組んでもたれて立ち、

相も変わらず感情の読み取りにくい瞳でカエデを見下ろしていた。

見つめあうこと数秒。

カエデはあわてて飛び起きた。

「れ、レイヤ!?

 なんでここに!?」

「・・・迎えに来た」

「はいっ!?」

「・・・朝稽古の相手を願いたいから、おれはここにいる」

カエデはまばたきを繰り返した。

「もしかして、私が起きるのを待っていてくれたの?」

「・・・おまえの護衛はおれの役目でもある」

話が微妙にかみ合っていないが、否定しないということはどうやらそうらしい。

カエデはふとんから抜け出すと、レイヤのもとに向かった。

彼の視線が一瞬カエデをとらえ、その後何故かすうっとそらされた。

彼女はそれにかまわず、レイヤの手を取った。

「・・・何をしている?」

「温めているの」

剣ダコの目立つ骨ばった手は、ひんやりと冷たかった。

カエデはそれをさするようにしてこすった。

「ヒタギが行っちゃってからずっといてくれたんでしょう?

 そのお礼に。

 ・・・ほら、こんなに冷え切ってる」

カエデのために冷え切った手に、はあっと息を吹きかける。

すると、熱いものに触れたかのようにレイヤの手がすばやくひっこんだ。

何故か彼の耳が真っ赤になっている。

「レイヤ?」

「・・・・・・・・・己の姿を、よくかえり見た方がいい」

くるりと背を向けるとレイヤは速足で去って行った。

やや乱暴に障子が閉められ、カエデだけがその場に残った。

冷えた手に吐きかけた息は熱すぎたのだろうかと首をかしげる。

そして彼女は言われた通り己の姿を見おろしてみた。

「・・・・・・」

やけに肌寒い。

それは、肌の色がうっすら透けて見えるほど薄い小袖一枚しか

身に着けていなかったからだ。