コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.116 )
- 日時: 2013/04/10 20:44
- 名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)
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*その場を飛びのいた瞬間、白刃がカエデのいたところを遅れてないだ。
すぐさま、のどもとめがけて刀の切っ先が迫ってくる。
自らの三日月をたててそれをはじくと、しなやかな動きで刃をレイヤの方へと滑らせる。
彼は、獣のように俊敏な動きでかわすと、軽やかに後ろに大きく跳んで追撃から逃れた。
だが、カエデにはそのあとを追って、さらに攻撃を加える気力はなかった。
荒い呼吸を繰り返すカエデとは対照的にレイヤは何事もなかったかのように立っている。
忍びとして、彼も体をしっかりと鍛えているのであろう。
だが、カエデが四鬼ノ宮に来る前のしばらくの間、剣術の稽古しなかったことが
今、苦戦している理由だろう。
やはり体はなまっているとおもうと悔しかった。
カチンという硬い音がしたので、そちらを見るとレイヤが刀を鞘におさめていた。
「もう・・・おしまい、なの?」
「ああ。
・・・休みをとろう。
おれもいささか疲れた」
汗ひとつかいていない涼しい顔で言われると、どうがんばっても
カエデを休ませようとしているようにしか聞こえない。
その気遣いにカエデはもうしわけなく思うより、腹が立った。
「私は、まだやれる!!」
胸の内で炎が燃える。
幼い頃から、足手まといだと言われることが嫌で———怖かったのだ。
にらむように見てくるカエデをレイヤは静かな瞳で見つめかえした。
「・・・おれは休みたいのだが」
その一言でカエデの頭は一気に冷えた。
「ごめん、なさい・・・」
今のカエデは、奴隷巫女のような身分だ。
四鬼ノ宮の者に逆らってはいけない。
なにより、レイヤの提案は善意からのものだ。
それを、ただの意地でなんかで突っぱねてしまった。
「・・・何故、謝る?」
「え?」
深い色をした瞳が自分を見つめていた。
「・・・おまえに、非はない。
よって、謝る必要もない」
「いや、あの・・・」
「・・・行くぞ。
あっちに川がある。
汗を流すといい」
そう言うと、レイヤはくるりと向きを変え、無言で歩き出した。
一瞬、呆然としてしまったが、あわてて彼のあとを追った。
そこには、カエデがついてきやすいように、ゆっくり歩くレイヤの背中があった。