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Re: 浅葱の夢見し ( No.122 )
日時: 2013/04/13 22:15
名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)

*しばらく黙っていたが、カエデはある異変に気付いた。

トクマの顔が徐々に赤くなっている。

既にほんのり色づいているという段階ではない。

湯気が出そうなくらい———

「お、おまえっっっ!!!」

「はい?」

「何してんだよっっっ!!!」

トクマがそれこそゆでだこのような赤い顔でどなった。

トクマの視線が一瞬離れがたそうにカエデの体を行き来した後に

おもいっきり顔をそむけられた。

「何って・・・沐浴?」

「さらっと言ってんじゃねーよっっっ!!!」

思わずという風に、トクマはこちらを振り返った。

「なっ、何って言われたから答えただけじゃない!」

「お、おいっっっ!!!

 その恰好で近づいてくんなっっっ!!!」

必死の形相でトクマは両手を振り回し、カエデはよくわからないまま足を止めた。

首をかしげて彼の顔をのぞきこむ。

「どうしたの?

 そんなにあわてて?」

すると、彼の顔はさらに赤く染まった。

「どうしたのじゃーねよ!!

 その恰好と顔でこっち見るな!!

 だーっ!

 もういい!!

 おれは帰る!!」

そう叫ぶとトクマはすさまじい速さでもと来た道を走って行った。

その場に呆然としたカエデが残される。

「・・・いのしし、いいのかな?」

カエデの前には目を回した彼の獲物がころがったままだ。

「なんで、逃げたんだろう・・・?」

そういえば、トクマの視線が一瞬自分の首から下のあたりから、

足のあたりまでを行き来した気がする。

自分の姿を見おろしてみる。

「・・・」

ずざざざざと音をたてて血の気が引く感じがした。

一糸まとわぬ姿に、手に持っている布で体の胸から足のつけねあたりまでしか

隠していない状態で、自分は立っていた。

「・・・・・・」

精神的にやられたカエデは力なく川辺にしゃがみこんだ。

「・・・み・・・られた」

婚約もしていない男性にだ。

それも、よりによってトクマに。

彼が何故あれほど動揺して逃げ出したのかよくわかった。

「・・・どうしよう」

これから、どういう顔をしてトクマに会ったらいいのか

わからなくなった。

カエデは頭をかかえて、さらに落ち込んだ。