コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.127 )
- 日時: 2013/04/14 21:16
- 名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)
*カエデはあたりを念入りに見回して、トクマがいないことことを確認してから
そっと廊下を歩き始めた。
つい先ほど森から帰ってきたのだ。
しばらくはまともにトクマの顔を見ることはできないだろう。
ふと前の方からキラキラしたものが近づいてくるのが見えた。
今日も光り輝かんばかりに麗しいヒレンだ。
彼ならトクマがどこにいるかわかるかもしれない。
そこを避ければトクマに遭遇してしまう可能性は減るだろう。
「ひ・・・」
すると、カエデが呼びかける前にヒレンはこちらの存在に気づいたらしい。
天使のような柔和な笑みを浮かべこちらに歩み寄ってきた。
「久しいね、巫女姫。
しばらく君の相手をできなくてすまなかった。
用事が立て続けに入ったものでね」
「とっ、とんでもございません!!」
麗人にすまなそうな顔をされると押しつぶされそうな罪悪感に襲われることを
カエデは初めて知った。
「その、ヒレン様、トクマ・・・どこにいるかご存じないですか?」
「トクマ?
やつが君に何かしたのかい?」
「い、いやその・・・なんかどこにいるのか、ちょっと気になって・・・」
まさか、裸を見られたなんて口が裂けても言えない。
「ふうん?
トクマのことが気になるのかい?」
なぜかヒレンの笑みがすごみのあるものに変わった気がする。
カエデの背に冷たい汗が流れた。
「い、いや・・・気になるとかじゃなくて・・・逆に会いたくないっていうか・・・」
「あ、そうなのか」
ヒレンの笑顔から黒いものが抜け、純粋なキラキラしたものだけになった。
「トクマはよく弓道場にいるから、そこにいるだろう。
暇さえあればすぐ弓に走るからね」
「弓道場・・・」
武道が大好きなカエデにとってこの上なく興味をそそられる単語だったが
理性と精神力でなんとか耐えた。
とりあえず、弓道場の周囲を避ければ彼に会うことはあまりないだろう。
「それよりも巫女姫。
夕餉でも一緒にどうだい?」
「ゆ、夕餉ですか?
でもヒタギが・・・」
彼には他の者と食事をとるなと言われている。
「ああ、ヒタギのことは心配ない。
だいぶ遠くのところまで任務に行かせたから5日は帰ってこないよ。
安心していい」
そう言うと彼は穏やかな笑みを浮かべた。
・・・なぜだろう。
彼の笑顔が黒く見えるのは。