コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.218 )
- 日時: 2013/05/19 21:17
- 名前: いろはうた (ID: a4Z8mItP)
*「明日、祭りがあるのは知ってるよな?」
「…は、はい」
四鬼ノ宮から大きな川を挟んだ向こう側に大きな村がある。
そこで花祭り、というかわいらしい名前の祭りがあると、女官たちが
噂していたのは聞いている。
「お、おまえ、レイヤみたいに剣術好きだろ?」
「は、はあ…
あそこまで溺愛はしていないけど…」
「…おれを呼んだか?」
「呼んでねえっつーの…ってレイヤ!?」
いつもより若干目が輝いているレイヤが、いつの間にかトクマの背後にいた。
剣術という単語に反応したらしい。
「おまえ、いつからいた!?」
「…おまえがそいつを呼びとめたあたりからだ」
…剣術への大いなる愛がほとばしってしまったらしい。
「…して、話をまとめると、お前はそいつに剣術なり舞なりを
祭りで披露してもらうかわりに、なんでも好きなものを買ってやるから、
ともに祭りに来てくれないかと誘いに来たわけか?」
「…お、おまえ…人が何時間もかけて言おうとしたことをよくも…」
「私、もし許してもらえるなら、行きたいんだけど…」
「ほ、本当か!?」
「…ならば、おれも行こう」
「はあっ!?
なんでおまえがくるんだよ!?」
「…剣術は相手がいなければ面白くない」
「今、剣術の話はしてないわよ?」
「…それにおまえひとりではこいつの護衛は無理だ。
もし、こいつに何かあったら、おまえ、ヒタギ様に何て言うつもりだ?
直々に護衛の任を預かった身だろう。
…よく考えろ」
レイヤの淡々とした言葉に、トクマは黙り込んだ。
一方のカエデは、胸の奥でよくわからない感情が渦巻いていた。
今、カエデの身は”ハルナ”として四鬼ノ宮では扱われている。
そう。
今はハルナなのだ。
カエデじゃない。
この心遣いも、自分に向けられているようでそうじゃない。
トクマやレイヤを護衛につけるほど、
ヒタギはハルナのことを大切に思っているのだろうか。
そう考えると何故か胸が鈍く痛んだ。