コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 浅葱の夢見し ( No.222 )
日時: 2013/05/23 20:24
名前: いろはうた (ID: a4Z8mItP)

*その場にへたりこみそうになる寸前で腰に強い腕が回った。

体が持ち上がり、視界がぐらりと揺れる。

「き、きゃあああっ!?」

「ったく、怖いなら、さっさと言えっての」

「と、トクマ!?」

僅かに顔の赤いトクマがカエデの体を、腕一本で抱き上げていた。

これは相当腕力がないとできないだろう。

だというのに、カエデを支える腕はびくともしない。

びゅうっと強い風が吹き付け、カエデは思わず彼の首元に顔をうずめて、

その衣にしがみついた。

うっすらと汗と草とさわやかな香りがした。

何故かしがみついた瞬間、トクマの体がこわばったが、やがて彼はゆっくりとだが歩き出した。

カエデを落とさないようにという感じで慎重に支えてくれている。

「あの…ごめん。

 重いよね…」

「全然。

 つか、むしろ気持ち悪いくらい軽い。

 おまえ、ちゃんと食べてるか?」

「た、食べてるよ!」

「んじゃ、食い足りねえってことだろ。

 こんなに細こっくってふわふわしてんのに、よく生きてきたな。

 今まで」

「……」

褒められているのかはわからないが、どうやら彼は褒めているらしい。