コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.26 )
- 日時: 2013/03/31 22:23
- 名前: いろはうた (ID: vpptpcF/)
*つやつやした木の床に座らされると、静かにふすまが開いた。
廊下から、膳をささげもって数名の女官たちが入ってくる。
ちょうど二人分の食事だ。
その奴隷巫女に対する食事とは思えない贅沢なおかず
に
カエデの目は釘づけになった。
毒が入っているのではないかと疑ってかかりたくなる
ほどだ。
彼女たちは静かにそれを置くと、来た時と同じよう
に、
静かに部屋から出た。
豪華な食事を前にして、カエデはある一つの仮定を口
にしてみた。
「もしかして・・・私と食事をするために、まだここ
にいるの?」
「ああ」
当然だ、という顔でヒタギがうなずく。
カエデはめまいを感じた。
(いったいどこに奴隷巫女と食事をする忍びがいるの
よ!?)
いや。
いる。
自分の目の前に。
ため息が出そうになるのをこらえて、カエデはあるこ
とに気づいた。
これは、四鬼ノ宮やそのほかいろいろなことについて
きけるいい機会だ。
さっと、ヒタギを見れば、すでに食事を始めようとし
ていた。
カエデの視線をかんじて、ヒタギも顔を上げた。
「どうした。
食べないのか。
・・・それとも」
一度口を閉じると、彼は妙に色気のこもった視線をこ
っちによこした。
「おれに食べさせてほしいというのか?」
「はあ!?ち、違う!!」
「そう照れるな。
どれが食べたい?
おれが”あーん”をしてやろう。
ほら、口を開けろ」
「だから、違うってば!」
「遠慮はしなくていいぞ」
「変な目でこっち見ないで!!」
悔しいがやはり、ヒタギの方が一枚上手だ。
いけない。
このままではヒタギの流れに乗せられてしまう。
一人で真っ赤になっただけで、何もきけていない。
「ねえ」
「やっと食べさせてほしいものが決まったか。
どれだ。
言ってみろ」
「じっ、じじ、自分で食べられます!
そ、それより、あなたの話が聞きたいの!!」
すると、ヒタギはあのものすごく不機嫌そうな顔でこ
ちらを見た。
「何故、兄上のことは、ヒレン様で、おれのことは名
前で呼ばない」
「・・・は?」
「おれのことは、ヒタギと呼べと言ったはずだが」
「・・・・・・」
いちいち細かい男だ。
そんなところさらっと流せばいいのに。
だが、ここを無視すればヒタギがさらに不機嫌になる
ことを
カエデはあまり長くない付き合いの中で学んでいた。
「・・・・・・・・・ひ、ヒタギの話が聞きたい」
彼の青い瞳を見ながら言った。
目を見ないと、同じく不機嫌になるであろうと想像で
きたからだ。
ヒタギの唇に笑みが浮かんだ。