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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.316 )
- 日時: 2013/07/09 14:29
- 名前: いろはうた (ID: VHEhwa99)
*「任務の帰りだった」
ヒタギとカエデは岩と岩の隙間にできた洞のようなところに、
身を寄せ合って座り込んでいた。
たき火などしては、煙で相手に居場所が知れてしまう。
しかし、濡れた恰好のままだと風邪をひいてしまう、と言って、
ヒタギはあぐらをかいた足の上にカエデを座らせ、彼女をしっかりと抱きしめていた。
まるで、二人が初めて出会ったあの夜のように。
おかげでずいぶんと温かい。
思わず眠気を覚えるほどに。
「まっすぐ四鬼ノ宮に帰るつもりだったが、
途中で会った何人かの村人たちに祭りがある、と聞いた。
だから、おまえに何か珍しいものでも祭りで買ってこようかと思って
つり橋の方に向かった。
…それで、おまえが賊に襲われているのを見た」
ゆらめく意識の中、耳に心地よい声が優しく流れ込む。
形を確かめるように長い指があごから頬にかけて何度もなでるのがくすぐったくて、
カエデは少しだけ身をよじった。
「…ヒタギは、うつけよ」
カエデはぼんやりと呟いた。
「…助けに行くのが遅くなったのは謝る」
「違う。
そうじゃなくて…私を助けたこと」
「どういうことだ」
声がいぶかしげな調子に変わった後、一気に低くなった。
「……おれでなく、トクマやレイヤに助けに来てほしかったということか」
「なんでそうなるの!?
…わ、私は…そ、その…」
カエデは一瞬ためらった。
だが、ヒタギが先を促すように黙っているので恐る恐る口にしてみた。
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