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Re: 浅葱の夢見し ( No.322 )
日時: 2013/07/12 10:55
名前: いろはうた (ID: VHEhwa99)

*本当は


 もっと前から理解できたはずだった。


 あなたは、絶対に私のものにはならないと。


 絶対に。


 だけど


 離れたくなくて。





 —————————認めたくなくて。








*目が覚めたら一番に天井が見えた。


「…あれ?」

確か先ほどまで、洞にヒタギと共にいたはずなのだが。

起き上がってみると、今座っている布団の周りを、幾重にも布が囲み

蚊帳のような布の壁となってカエデから周囲の景色を隠していた。

「な…なにこれ?」

「おう!

 起きたか!!」

布の外から声が聞こえた。

「トクマ?」

「なあ、そっちにいってもいいか?」

「う、うん」

衣擦れの音と共にカエデの足元側にある布が揺れ、

トクマが出てきた。

「ったく、レイヤの奴、やりすぎだろ…」

「これ、レイヤが……?」

そういうと、彼は何故か言葉を濁した。

「ああ。

 ま…その…ヒタギ様避け…みたいな?」

「ヒタギ…避け?」

布の下からなんとか這い出してきたトクマは、カエデの姿を見ると

すいっと視線をそらした。

「…衣」

「衣?」

「こっ、小袖一枚とか薄すぎるんだよ!!」

透けて見えるだの目の毒だだの言いながら、彼は強引に布団を彼女にかぶせた。

それにくるまりながら、トクマはこういうところが優しい、と

カエデは嬉しくなって、唇に笑みを乗せた。

「いいか。

 それにくるまって寝ながらでいいからおれの話聞いてろよ。

 間違ってもおれに近づくな。

 おとなしく聞いとけ」

「う、うん…?」

カエデはまだ少しぼんやりする頭で、おとなしく言われた通りに

ふとんにもぐりこんで、トクマを見上げた。

「これでいい?」

「…………」

「トクマ?」

「…………おまえ、剣はどうした」

「剣って…三日月刀のこと?」

「ああ。

 枕元にあるな。

 いつでも手に取れるようにしとけよ。

 ……んで、おれが、おまえに、変なことをしそうになったら、

 そいつでおれを全力でぶったたけ」

「変なことって?」

「お、おまえなあ!!

 そこは聞くんじゃねえよ!

 おれは、今、自分でも賢明だと思える判断をしただけだっての…」

トクマは一つ大きなため息をついた。