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Re: 浅葱の夢見し ( No.338 )
日時: 2013/07/17 00:01
名前: いろはうた (ID: VHEhwa99)

*「トクマ?」

「四鬼ノ宮はでかい」

「う、うん。

 お屋敷大きいね」

話の流れがよくわからないままカエデはうなづいた。

「でかいから、そのぶんうっとうしいなあ…とか思われやすい。

 だから、襲撃なんか珍しいことじゃない」

「そう、なの?」

「ああ。

 今回襲ってきた奴らも、たまたまおまえみたいな巫女がいたから、

 ついでにさらって帰ろうとしただけだ。

 おまえのせいじゃない」

「?

 私みたいな巫女……?」

「そうだ。

 おまえみたいな霊力が高くて、それで……

 か、かかっかか…」

トクマが突然、か、を連呼し始めた。

「か?」

聞き返すとトクマの頬に朱がさす。

「か、かかか、かわっかわっ」

「かわ?

 ああ、川におちるような間抜けな巫女ってこと?

 …そんな巫女、普通はほしがらないと思うんだけど…・」

「ちっっげーよ!!

 そうじゃなくて・・・・だあーーーーーーーー!!!!

 これ以上変なこと言わせるな!!!」

「変なこと?

 …トクマ?」

「トクマは、君が可憐でかわいらしすぎるから、さらわれそうになったんだって

 言いたいんだよ」

ここ数日聞かなかった声。

トクマの動きがぴたりと止まった。

カエデは固まった彼に代わって声を上げた。

「ヒレン様?」

「入ってもいいかい?」

「も、もちろんです!

 どうぞ」

軽い衣擦れの音と共に布の端が持ち上げられ、そこから四鬼ノ宮当主のヒレンが現れた。

彼の周囲には、おつきのものがいない。

「お忍びで来たんだ。

 あまり大きな声では言えないけどね」

そういうと彼はちらっとカエデを見た。

「ふうーん?」

というよりも、カエデの手のあたりに視線は向けられている。

「手までつながないといけないなんて、一体どんな話をしていたのか

 お聞かせ願えるかな?」

「………おうああっっ!!??」

数拍ののち、トクマは雄たけびと共に、カエデの手を勢いよく話した。

その様子をヒレンが笑みを浮かべて見ている。

気のせいだろうか。

ヒレンの目が全く笑っていないように見えるのは。