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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 浅葱の夢見し ( No.343 )
- 日時: 2013/07/19 14:24
- 名前: いろはうた (ID: VHEhwa99)
*「騒ぐな。
おれがここにいるのが他の者に知れたらどうする」
視界の端につややかな黒髪が映る。
カエデの口を優しく覆っている手の主はここにいるはずのないヒタギだった。
別室で休んでいたのではないのか。
いつの間に隣にいたのか。
完全に固まってしてしまったカエデを見て彼は一度手を離すと、
今度は指で唇に触れてきた。
「おれという存在がいながらほかのことを考えるなんて許せないな」
カエデはあんぐりと口を開けた。
ヒタギのわがままは今日も絶好調だ。
もう呆れを通り越して感心するしかない。
「少なくとも、おれが隣にいる間は、おれのことだけを考えていたらいい」
「か、考えようにも、ヒタギ、全然そばにいないから…!!」
とっさにそう言うと、ヒタギは意外そうに片眉を上げた。
「それは、おれに、もっとそばにいろ、ということか」
「え、ぁ…」
ヒタギの青い瞳は静かにカエデの言葉を待っている。
何か、言わなければ。
カエデはまっすぐに彼の瞳を見つめ返した。
「うん。
…もっと、一緒にいてほしい」
「………なんだって?」
カエデはこわごわ手を伸ばして、ヒタギの頬にそっとそえた。
寝ている体勢のままだと少しつらかったが、それでも触れずにいられなかった。
「ヒタギがそばにいないと、私、不安になる。
任務に行って、いるときは、大けがとかしているんじゃないかって、すごく心配だった。
もっと近くで心配させてほしいの。
私だってヒタギの力になりたい。
———だから」
任務にも連れて行って、と言おうとしたがカエデはそこで一度口を閉じた。
そういった自分自身に驚いたのだ。
いつからこんな風に思うようになっていたのだろう。
深い沈黙が落ちる。
ヒタギは一体どんな顔で今の言葉を聞いたのだろうか、とふと思って、
そっと視線を上げてみた。
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